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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(2)
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はもうそろ現れるって話だが、ポプラン、そっちに敵影は見えるか?』
「見えんね。俺様の闇夜を見通す抜群の視力をもってしても、どこにも怪しいもんは見えん。こりゃあ俺たちは外れ籤を引いたのかもしれんぞ?」
『そりゃあ面白くないなぁ』
『二人とも、もう少し緊張感を持って下さい!!!』
 フォンメル・ムラサメ少尉がポプラン、コーネフに声を荒げた。
 ポプラン、コーネフ両中尉とムラサメ少尉は現在、偵察任務として、同盟軍防衛網の外に来ていた。目的は接近する帝国軍の発見である。帝国軍は宇宙暦795年2月18日現在、未だ同盟軍の前に姿を表そうとはしていなかった。これは艦隊司令本部の予想よりも遅かった。痺れを切らした同盟軍は、3隻程度のスパルタニアン偵察部隊を四方に散らせて、その発見を急いでいたのである。差し当たって同盟軍の防御陣は強固であったが、敵が思わぬところから進み出るのは困る話だったのだ。
「フォンメル、そんなに緊張してちゃあ力も発揮できんぜ。女を前にした童貞野郎じゃあるまいし、もっと落ち着け」
 ポプランは口の端を上げて軽口を叩いたが、ムラサメはそれに応じなかった。どうやら、ムラサメは本当にまだ女の経験がなかったらしい。
『ムラサメ、緊張感を持つのは悪いことじゃない。だが、緊張感に縛られては駄目だ。肩の力を抜くんだ。今回は偵察だ。敵と交戦するのが目的じゃない』
『わかっては、いるのですが』
 スクリーンのムラサメはどことなく青い顔をしていた。コーネフの言葉で、深呼吸をしている姿が微笑ましい。
??自分にもあんな時代があったのだろうか。
 ポプランは過去に意識を飛ばそうとして、それを慌てて止めた。ポプランは過去を振り返らない男だった。それは彼の主義というよりも、彼が彼自身の過去を格好が良いものだと思っていなかったからである。彼ももっと若かった時代があり、その年齢にふさわしい失敗と後悔と反省を経験していた。それらは今のポプランにとっては赤面ものであり、気持ちのよいものではなかったのだ。それを微笑みとともに思い起こせないということは、彼がまだまだ若かったということの証左だったが、ポプランはそれを意識してはいない。
電子対抗手段(ECM)対電子妨害手段(ECCM)ともに現在作動中。敵によるジャミングも確認しました。敵の妨害衛星か、偵察衛星か、あるいは偵察部隊がどこかにいるのは確実です』
「敵衛星は見つけ次第破壊せよ、とのお達しだ。見つけたら叩けば良い」
『問題は偵察部隊ですよね』
 ムラサメ少尉はそう言ったが、ポプランは問題視していなかった。先のグランド・カナル事件の時も、第五艦隊司令部は3隻規模での偵察行動を実施した。あれはつまり、敵の偵察部隊はせいぜいそれで相手できる規模だろうと判断していたからに他ならなかった。確かに巡航艦三隻とス
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