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星河の覇皇
第八部第四章 総動員令その一
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フネールの顔に苦渋が浮かんだ。
「非常時とはいえとりたくはなかったが」
「仕方ないかと。ただその兵は精鋭でなければなりません」
「選抜徴兵制にするということか」
「実質的には。技術者や身体能力の高い者を兵士にすればいいかと思います。これによりより多くの兵が入ることでしょう」
「そうだな。ではそうするか」
「それが宜しいかと」
 ラフネールにもそれはわかっていた。そして何よりも逡巡している時ではないことがわかっていた。ならばそうするしかなかったのである。
「よし。議会に徴兵制の法案を提出しよう。すぐにそれの書類作りにかかってくれ」
「ハッ」
 モンサルヴァートはそれを受けて敬礼した。
「だが徴兵制だけではまだ不完全ですな」
 ここでシュヴァルツブルグが口を開いた。
「といいますと」
 モンサルヴァートがそれに問うた。
「兵士だけでは戦争は出来ないということです」
「成程。そういうことですか」
 彼はそれを聞いてこの老齢の軍務大臣が何を言いたいのか即座に理解した。そして答えた。
「それでは産業の方もそれに合わせるべきですね。国の全てを戦争に向けなければならない」
「総動員か」
 ラフネールがそれを聞いて呟くように言葉を漏らした。
「そういうことになりますな」
 シュヴァルツブルグはそれに低い声で答えた。
「やはりそれだけしないと連合と戦うのは不可能であると存じます」
「問題は間に合うかだな、戦いまでに」
「間に合わせるのです」
 シュヴァルツブルグの声が強くなった。
「そうでなければ我々は滅びます。むざむざ滅んでよいものでしょうか」
「まさか」 
 ラフネールはその言葉に首を横に振った。
「そう考えているならば今この場に君達二人を呼んだりなぞはしないさ」
「それを聞いて安心しました。では決まりですな」
「うむ」
 ラフネールは強く頷いた。
「総動員令も発しよう。すぐにな」
「はい」
「エウロパは一千年の歴史がある。だが今まで外敵に侵攻されたことはなかった」
 ラフネールはここで語りはじめた。
「そしてこれ程までの危機に瀕したこともなかった。増え過ぎた人口に悩まされることはあっても連合の脅威を隣に置いて
いてもここまではなかった」
「はい」
 二人はその言葉に頷いた。
「だが今その危機にある。そしてその危機を乗り越えなくてはならない」
「わかっております」
 それに答えた。
「その為にはどんなことでもしよう。例えこの命をゼウスやヴォータンに捧げようともな。それは卿等の命もだ」
「もとよりそれは承知のこと」
 シュヴァルツブルグがそれに答えた。
「エウロパの武人として当然のことです」
「私もです」
 モンサルヴァートもそれに答えた。
「この命、喜んで戦の神々に捧げま
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