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星河の覇皇
第六部第四章 ゲリラその五
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 元々連合は階級社会ではない。だからこうしたこともすぐに受け入れられた。エウロパとは根本から違う。
 エウロパでは将校と下士官、兵士の差は極めて顕著である。食事も居住環境もまるで違う。当然給与もだ。連合も将校と下士官、兵士ではかなり違うがエウロパはその比ではない。連合においては新兵と大学、若しくは士官学校を卒業し研修を終えて少尉となった者の給与は二倍程度である。責務が違うからこれは当然であると考えられていた。そもそもその新兵の給与も他の職の給与と比べればかなり高く設定されている。そうしなければ人が来ないという志願制のジレンマもあるが。
 だがエウロパでは何と五倍になる。当然将校には貴族が多い。連合の将校が士官学校や大学だけでなく下士官候補生や少年兵出身者、叩き上げのベテラン等から幅広く登用しているのとはかなり事情が違う。連合軍設立前であるがキロモトは下士官候補生から将校になり、八条も一般大学から日本軍の少尉になったのとは違うのである。貴族は兵士になることはない。平民とは違うのである。
 そしてその待遇もやはり違ったものになる。他の職や社会よりも軍ではそれが顕著になっている。軍は階級社会の象徴そのものであるからだ。
 これが連合にとっては格好の批判材料になる。彼等は口々にこう言う。
「差別そのものの象徴に他ならない」
「軍を支える連帯意識の放棄だ」
 と。だがエウロパの将校の質はかなり高いので昔から定評がある。これは連合の者も渋々ながら認めている。
 連合軍では将校も下士官も兵士もバランスよく能力を整える考えだ。軍律は非常に厳しいが教育や訓練は比較的穏やかなものとなっている。特殊部隊は別にしても鉄拳制裁も禁止されているし罵声も極めて少ない。やはり志願制である、そして紳士を育てる為でもあった。
 精兵を育てる必要はないというのが連合軍、そして八条の考えであった。バランスのとれた平均的な将兵を必要と考えているのだ。連合軍で必要とされているのは一人の名将や僅かな精兵ではなく多くのバランスのとれた普通の将兵であった。それ以外は求めてはいなかった。
 だがエウロパでは違うのである。下士官や兵士よりも彼等を指揮する将校に重きを置く。そしてその求められる責務や能力も非常に大きい。従ってその給与や待遇も違ってくるのである。
「その立場に相応しい能力や行動を持て」
 これがエウロパの考えである。所謂高貴な者の責務であった。だからこそ彼等は積極的に軍に入り、そして死地にも赴く。考え方が連合のそれとは違うのであった。
 連合では軍人はあくまで職業の一つである。これは将校も兵士も変わりはない。だがエウロパでは軍人になることは高貴な者の責務と考えられている。貴族はそこで正しき行動をとり、部下を指揮することが求められる。従って求められるものも大きくなっていく
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