第一幕その二
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また命令した。
「ねえチェネレントラ、これを」
クロリンデが懐から何かを取り出してチェネレントラに手渡した。
「あちらの方に。いいわね」
見ればお金であった。半スクードある。実はお金はあったのだ。大男を指差しながらそう指示をする。
「わかりました」
チェネレントラはそれに従いお金を大男に渡しに行く。そこに髭の老人が出て来た。
「貴方は」
「この方が我々の長でございます」
大男は恭しくそうチェネレントラに言った。老人はにこりと頭を下げて微笑む。チェネレントラは彼の顔を見てはたと気付いた。
「貴方は」
「まあまあ」
彼は右目を瞑って微笑んで彼女に対して言った。口の前に右の人差し指を縦にして置く。
「ここは静かに、いいね」
「は、はい」
チェネレントラは小声さ囁く彼に対して頷いた。
「明日になればいいことがあるから」
「いいことが」
「いずれわかるよ。さて」
老人はそう言い終わると小声を止めチェネレントラに対して言った。
「有難うございます」
そしてお金を受け取った。それから一行を引き連れて屋敷を後にした。
「またおいで下さいませ」
「うむ」
二人の姉達の見送りを受けて去る。屋敷には三人だけとなった。
「明日」
屋敷の中に残ったチェネレントラは老人の言葉を思い出していた。そして何があるのだろうと考えていた。だが何があるのか全くわからなかった。彼女は首を捻った。
「何なのかしら、私には全くわからないわ」
「ふう、やっと帰られたわ」
「やれやれね」
だがその考えは中断された。二人の姉が屋敷の中に戻ってきたのだ。そして彼女達はまた言った。
「さあチェネレントラ」
二人の姉は彼女に顔を向ける。
「リボンとマントを持って来て」
「はい」
ティズベに言われて衣装部屋に向かう。
「私はクリームと髪油。とっておきのをね」
「は、はい」
リボンとマントを持って来るとすぐに化粧部屋に駆け込む。
「ダイアモンド」
「はい」
「私はサファイア」
「わかりました」
慌しく駆け回る。そして持って来た物を姉達に手渡す。大忙しであった。
「それにしても御父様は遅いわね」
「ええ」
とりあえず着飾った姉達は汗をかくチェネレントラには目もくれずそう話していた。
「このことを早くお知らせしないといけないのに」
「それは私がやるわ、姉さん」
クロリンデが言った。
「何言ってるのよ、私が言うわ」
だがティズベはそれに反対した。
「私がお姉さんなのよ。忘れないでよね」
「あら、姉さんに大仕事をやらせるなんてできないわ」
しかしクロリンデはそう言って反論した。
「妹は姉の役に立つものですから」
「何言ってるのよ、いつもぐうたらしてるくせに」
「それは姉さんの方
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