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チェネレントラ
第三幕その三
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ったが吉です」
「はい」
「ダンディーニ」
 今度は彼に顔を向けた。
「そういうことだ。今まで御苦労」
「いえいえ」
 笑顔で応えてはいるが何処か寂しそうな笑顔であった。
「彼等にも帰ってもらうように」
「わかりました」
「そして」
 彼は次々に指示を出す。その動きはかなり機敏なものであった。
「馬車の用意を。わかったね」
「はい」
 ダンディーニがまた頷く。
「絶対に彼女を見つけ出すぞ。彼女が例えユピテルの手の中にあっても」
「また大胆な」
 アリドーロがそれを聞いて笑った。ユピテル、すなわちゼウスの好色さは最早言うまでもないことである。なおこの神は実は男色家でもあり鷲に変身して美少年をさらったこともある。黄道十二宮の一つ水瓶座の少年である。
「この指輪と愛に誓おう。何としても見つけ出そう」
「殿下」
 ここで家臣達が入って来た。そして彼の周りを取り囲む。
「参りましょう、美の女神を手に入れに」
「うむ」
 彼は家臣達の言葉に頷いた。
「しかし今は不安だ。冷たい不安が確かに心の中にある」
 果たして彼女を見つけ出すことができるのか、そう考えると不安でならなかったのである。
「しかしそれ以上の甘美な希望が心を支配している。今はその希望に従おう」
「殿下の望まれるままに」
「うん。それでは皆行こう」
「はい」
「愛を手に入れに」
 そして彼は家臣達と共に部屋を後にした。そして馬車に向かって行った。アリドーロはそれを見て一人微笑んでいた。
「これでよし」
 彼にとっては望み通りのシナリオであった。
「後は馬車を男爵家のすぐ側でこかせばいいな。ふむふむ」
 そして彼も馬車へ向かった。後にはダンディーニだけが残った。
「何か急に話が終わったなあ」
 いきなり王子役が終わり彼は呆然としていた。
「もうちょっと楽しめると思ったんだがなあ。世の中はそうそう上手くはできてはいないということか」
「殿下」
 しかしここに世の中がそうそう上手くは出来ていると思っている者がやって来た。

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