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星河の覇皇
第五部第三章 巨大戦艦その六
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半の戦車を思わせる角張ったデザインにその武装はよく合っていた。違うのはその頃の戦車よりも二倍以上の大きさを持っているということであろう。
 そして指揮用の移動要塞が来た。巨大な砲と無数のミサイルランチャー、機銃で装備したとてつもなく巨大な戦車であった。いや、戦車の様なものであった。
 全高は優に二十メートルはあった。重砲の二倍はあろうかという巨大な主砲を二門砲塔に搭載している。砲塔の四角にはそれぞれ対空砲座が設けられている。
 そして車体の左右は三段になっている。一番上には対空砲座と対空ミサイルランチャー、二段目にはビーム砲座、三段目には戦車のものと思われる砲塔がそれぞれ四つずつ備えられていた。対空砲座とミサイルランチャーは二つずつ交互であった。何とも言えぬ威圧的な姿であった。
「あれが指揮用の兵器か」
「ネットで噂には出ていたがあれ程とはな」
 マニア達は必死に写真を撮っていた。それを中央政府の高官達は満足そうに眺めていた。
「やはりこうしたことに興味のある人達の反応は素直だな」
「そうですね、こうした反応が一番わかりやすくていいです」
 キロモトとアッチャラーンはにこやかに笑っていた。
「ただ財政的にはかなり悩まされましたけれどね」
 財務大臣であるケマル=トラブゾンが苦笑しながら言った。彼はトルコ出身であるが珍しく髭を生やしてはいない。トルコでは昔から口髭を生やす風習であったが最近それが変わってきているのだ。
「髭なんてもう古い」
「これからは古いしきたりにとらわれてはいけない」
 こうした意見からだ。こうした事は過去何度もあった。人々はその度に髭を剃り、時が経てばまた生やす。要するに流行という一面が非常に強いのである。
 このトラブゾンもそれは同じである、かというとそうではない。彼は当初この運動にどちらかというと否定的であった。
「髭がないと寒くて仕方ない。私は寒いのは嫌いだ」
 と言うのである。実は彼は温かい星系の出身であった。
 だがある日急に髭がなくなっていた。彼は真相を話そうとしなかった。
「気分が変わっただけだ」
 憮然としてそう言うだけであった。それ以上は話そうともしない。
 話そうとしないと噂になる。人々は色々と話をした。
「煙草で焦がしたのじゃないか」
「髭を剃る時に間違ってザックリといっちまったか」
 だが真相はわからず終いであった。結局彼の髭はなくなった。それは今でもそうである。
「疑惑の髭」 
 こう笑い話にされていたが彼は財務相としては有能であった。無駄な出費を省き、効果的な運用をすることで知られていた。
「髭と私の能力に関係はないだろう」
 マスコミのインタビューに対しては苦笑いしてこう答えるのが常であった。
「ですが急に髭がなくなったので」
「一体何故でしょうか」
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