第五部第一章 新たなる幕開けその一
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そうして彼は新たな農園の開拓及び肥料、器具の購入に金を回した。
そして彼は農園をさらに拡大させた。その時にはエウロパの総統は代わっていた。次の総統はこう言った。
「連合の人間は金を人生を愉しむ為には使わない。ただ働く為に使うだけだ」
と。そのオーナーは今度はそれを冷笑を以って迎えた。
「俺達だって人生を愉しんでいるさ」
そして自分の後ろにある広大な農園を指差した。
「俺の生きがいはこれだよ。この農園は俺が一代で切り開いたものだ」
そしてその隣の葡萄園を次に指差した。
「これには苦労させられたがな。だが遂に成功したよ。ここでワインを造っている」
そして彼は言った。
「こうして農園を開拓することが俺の人生の愉しみなんだ。お貴族様にはわかりもしないだろうがな。それに」
彼は言葉を続けた。
「余裕だのゆとりだの言っている暇があったらその時間に遊ぶさ。俺だって働きづめじゃない。それにな」
次第にその言葉が荒くなる。
「人それぞれの人生の愉しみ方、金の使い方があるんだ。それもわからないでよく総統なんてやってられるもんだな。エウロパが何で俺達に勝てねえかよくわかったよ」
そして最後は痛烈にそう言い返したのであった。
これは連合の人間の考え方をあらわした有名な話である。アッディーンはそれを思い出していた。
「それも一つの考え方だ」
彼はそれは認めていた。
「少なくともエウロパの貴族達よりは遥かにいい」
エウロパではやはり貴族達の方が全てにおいて恵まれていた。屋敷に住み特権を与えられている。それは紛れもない事実であった。
アッディーンはそれを嫌悪していた。特権なぞ人を腐敗させるだけのものと考えていた。
「そんなものは何にもならない。ましてや産業にとっては有害以外の何者でもない」
それが彼の考えであった。彼もまた一市民の出身であるから当然といえば当然である。だがここでもイスラムの教えがあった。
「人はアッラーの前では全て同じである」
これは彼だけでなくサハラの者全てにある考えだ。
連合における機会平等主義とはまた違う。イスラムでは人の力をあまり高く評価はしていない。
「人の力はアッラーのそれと比して微々たるものである」
こう考える。そして全てはアッラーの思う処に拠るのである。
シャイターンはそうした考えが特に強い。アッディーンにもやはりある。
「そう考えるとこれからのサハラの命運もアッラーの思われる処に拠る」
それもまた一つの考えである。だが彼の考えは少し違っていた。
「アッラーは自ら動く者を導かれる」
そう考えていた。だから彼は動くのだ。
「産業もそれは同じ」
そしてこうも考える。
「急激なものはよくないが発展はアッラーの望まれることである」
イスラムは商人の宗
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