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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十三話 前途多難
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レンシュタイン中将か』
スクリーンにシトレが映った、低い声で話しかけてくる。
「はい」
『少し待ってくれ。今トリューニヒト委員長を呼び出す』

少しと言ったが結構時間がかかった。やがて現れたシトレが済まなさそうな声を出した。
『済まんな、どうやら最高評議会に出ているらしい』
「そうですか」
『ここ最近は連日でな。毎日のように最高評議会を開いているよ。評議会も日に日に地球教の厄介さを感じているようだ。そう言う意味では悪くは無いな』
「確かに」

仕事をするのは良い事だ、特に上の人間が仕事をするのはな。但し会議ばかり開いて何も決まらないと言うのでは困るが……。シトレが笑みを見せた。
『ようやく君と忌憚なく話せるな』
「そうですね、腹の探り合いの様な会話は食傷しましたよ」
シトレが声を上げて笑った、俺もだ。

『お互い暇じゃない、話を進めよう。これからだが我々が気を付けなければならない事は何かな』
良いね、こういうのは。フェザーンでの一件をグズグズ言わない。優先順位をはっきりさせてくる。こっちもやりやすい。

「二つ有りますね。一つは地球教によるテロを防ぐことです。トリューニヒト国防委員長、レベロ財政委員長、ホアン人的資源委員長、そしてシトレ元帥。気を付けてくださいよ、和平を前にして死なれては困ります」
俺の言葉にシトレがまた笑い声を上げた。

『君が心配してくれるとは有り難いな。皆にも伝えておこう』
「冗談ではありませんよ」
『分かっているよ、ここで死ぬことは出来ない、皆が分かっている。だから君も気を付けてくれ、我々は君を失うことは出来ないんだ』
何を言ってやがる、この狸親父。油断も隙もないな、俺を懐柔しようってか。

「もう一つは主戦派です。帝国が混乱しフェザーンが地球教の根拠地だと分かった以上その中立を守る必要性は無くなりました。そして帝国は軍事力が弱体化している。主戦派がフェザーン侵攻、イゼルローン要塞攻略を唱える危険性があります」
『我々もそれを心配している』
シトレが顔を顰めた。おそらくトリューニヒト達とも話したのだろう。やはり主戦派がネックだ。

「特に今、主戦派は危機感を抱いているはずですよ」
『危機感? どういう事だね?』
「主戦派を占める人達はどのような人達です?」
シトレが眉を顰めた、少し間をおいてからゆっくりと答えた。

『……軍人、軍事産業に関わる人間が主体だな』
「彼らは帝国と戦う事は地球教の思う壺だ、そういう意見が出る事を恐れている。いや、実際出ているのかもしれませんがそれが同盟市民の間に定着するのを怖れている。そうは思いませんか」
『……なるほど、確かにそうだな。戦争が出来ない、出世が出来ない、儲けが出ないか……。いや、何より裏切り者と言われかねんか……』

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