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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
手にする資格 ─イレギュラー─
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 冬木の町から橋を渡った先の隣町。
 新都方面に属するこちら側は、一見オフィス街や立ち並ぶビル群などの開発が進む都会のイメージがある。
 だが主要駅各線から外れてみれば、昔ながらの閑静な街並みが残っている。

 郊外などその最たるものだ。なだらかに続く坂、海を望む高台、教会へ続く丘の斜面途中には外人墓地がある。
 そんな街並みを眺めながら高台を登りきれば、そこには整えられた花壇が左右を敷き詰める広場、そしてその奥には目的地である教会が聳えていた。

 今は先に、士郎と凛が教会の中に居る。
 
 あれだけ士郎にくっついていたセイバーは外で待機していた。
 その理由には何となく察しがつくので、俺としては士郎が選択を誤らないことを祈るのみ。
 恐らく士郎は聖杯戦争について、そしてそれが行われる理由、参加する際に戦うための覚悟を己に問うため、など色々と思惑があるだろう。

 俺が共に教会へ入らなかったのは、一度に押しかけても仕方ないだろうということと、俺と士郎の最終目的が違うからだ。
 
 聖杯戦争について、俺は参加する前提でここに来ている。

 俺は──優れた魔術師同士の争いというものに、いたく高揚感を覚えていた。
 今まで魔術師としての覚悟が鈍ったことはない。されど、人としての生活に慣れ親しんでいた俺には、まだ魔術師としての完成度が足りていなかった。

 切った張ったのやんちゃはしてきたが、これまで命のやり取りをしたことはない。
 魔術師の世界は殺伐としたもの。それは曾祖父さんから言い聞かされていたし、殺し合いというものを知識の上では知っていた。
 命のやり取りをするということに特別な価値観を見出せなかった。だからこそ、それが日常となる魔術社会に俺は辟易していた。

 それは俺が、本当の戦いを経験したことがなかったから。
 今夜、あの黒いサーヴァントに襲われた時に────それを理解してしまった。

 剣道だのなんだのと、そんなスポーツでは味わえないあの高揚感。
 今まで自分と並ぶ者がいなかったが故に、己の生に充実感を感じられないという、一種の感覚麻痺。
 磨き、鍛え、競い合い、高め合い、自分と互角以上の相手と自らの矜持を賭けて戦うということの意味を。

 ああ、何故もっと早く気付かなかったのか。
 殺し合いに狂しているわけではない。ただ魔術師同士での争いは、終わりがほぼ相手の死でしかないというだけ。

 普通と何が違うかといえば、その戦いの結果が自らの死だとしても厭わないという一点のみだろう。
 全力を尽くせる戦いであればそれでよし、それが命を賭けるほどの相手であればそれ以上のことはない。

「……フェンサー」
「なぁに?」
「俺はおまえのマスターとして相応しいか?」

 フェンサ
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