暁 〜小説投稿サイト〜
八条学園騒動記
第二十九話 どちらが先にその一
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

                   どちらが先に
 ギルバートはアンへの注視を開始した。それは実にわかり易いものであった。
 いつも彼女を見ているのだ。気付かない方がどうかしていた。
「やっぱりなあ」
 マルコはその予想通りの反応にかなり呆れていた。じっとアンを見続けている彼を見ながら呟く。
「あれでわからないと思っているのかな」
「みたいよ」
 それにビアンカが答える。
「本人はね」
「どうかしてるよ」
 マルコはそれを聞いてあらためて述べた。
「あれでわからないなんて」
「どうなるかな」
 セドリックがそれを見て呟く。
「あの二人これから」
「後はアン次第ね」
 ビアンカはそう述べた。
「彼女がどう動くかよ」
「アンが」
「一方だけ動いてどうにかなるものじゃないじゃない」
 彼女の言葉は実に的を得ていた。そういうこともわかっているのである。
「そうでしょ?二人のことなんだから」
「そうだね」
 セドリックはその言葉に頷いた。
「確かに。だから何が起こるかわからないんだけれど」
「それが面白いんだけれどね」
 見方がかなり意地悪ではある。ビアンカ自身もそれはわかっている。
「けれどね」
 彼女はまた言う。
「本当にあれで。わからないって思ってるのかしら」
「みたいだよ」
「本人は」
 二人はまたビアンカに対して述べる。
「やれやれ。全く」
 ビアンカはそれを受けて困った顔でふう、と溜息をつく。それからまた述べた。
「何かと大変ね、アンも」
 そのアンは今も普通に漫画を描いている。やはりそこにはルビーも一緒にいてアシスタントを務めている。そのルビーが彼女に声をかけてきた。
「ねえアン」
「わかってるわ」
 アンは彼女に答える。漫画のプロットを見ながら。
「見えてるから」
「そう。だったらいいけれど」
「急にどうしたのかしら」
「さあ?」
 ルビーはその言葉に首を傾げさせる。
「何かあったんじゃないかしら」
「その何かが問題ね」
 アンは述べる。
「急にチラチラと」
「チラチラどころじゃないわよ」
 ルビーはこう訂正を入れてきた。
「堂々と見てるじゃない。ずっと」
「そうね」
 その訂正に対して頷いた。
「言われてみればまさにそれね」
「心当たりないわよね」
 ルビーは彼女に問う。彼女もプロットを見ながら話をする。
「やっぱり」
「やっぱりもきっぱりもそうよ」
 アンはいささか変わった表現を使ってきた。
「そうじゃないとどうしたのかなんて思わないじゃない」
「そうね」
「そうよ。しかしまあ」
 ここで彼女はうっすらと笑ってきた。
「悪い気はしないわ」
「そうなの」
「ええ。だって」
 その笑みが楽しげなものになっていく。本
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ