暁 〜小説投稿サイト〜
八条学園騒動記
第三話 スポーツはいいけれどそのニ

[8]前話 [2]次話

「またウィースが騒いでるぜ」
「今度は何馬鹿なこと考えてるんだろうな」
 サッカー部やラグビー部の面々がそれを見て言う。彼等はどうもフランツのことを知っているようである。
「やるぞ!俺はやるんだ!」
 全力でランニングしながら叫ぶ。
「明日という日の為に!思い込んだら試練の道だ!やるぞ!」
「やるのはいいですけど先輩」
 その横で後輩達が言う。
「何か滅茶苦茶やってません!」
「滅茶苦茶ならばそれでいいんだ!」
 フランツはその後ろに炎を背負って叫ぶ。
「その先に友情、努力、勝利があるならば!俺はやってやる!」
「駄目だこりゃ」
「これさえなければいい人なんだけどなあ」
 後輩達も完全に匙を投げている。
「さあ、だから今日も猛練習だ!」
 相変わらず走り続けている。それも全力でだ。なお彼がやっているのはランニングでありダッシュではない。だが彼はそんなことは頭には入っていない。
「身体を苛めて苛めて苛め抜き!」
 叫びながら走っている。
「そして新たな技の開発だ!」
 ランニングが終わった。今度は投球練習である。
「タムタム!」
 キャッチャーの赤い髪に黒い肌の少年に叫ぶ。
「今日も俺の剛速球を受けてもらうぞ!」
「剛速球はいいけれどよ」
 そのキャッチャータムタム=ハリオは問う。
「おめえこの前の変化球はどうしたよ」
「ああ、あれか」
 彼はそれを聞いて思い出した顔をする。
「安心しろ、マスターした」
「そうか、それは何よりだな」
 まずはそれを聞いて頷く。だが目は警戒したままである。
「それでな」
「ああ」
 話は続く。
「じゃあ見せてみろ」
「よし、見ろ!」
 目だけでなく身体全体が真っ赤に燃えはじめた。
「この俺の必殺魔球そのニ!」
 なおその一は縦割れカーブらしい。人はそれを古くはドロップと呼んだが彼はそれを勝手に魔球にしてしまっている。皆呆れて何も言わないだけだ。
「カミソリシュート!」
 恐ろしいまでに鋭く曲がるシュートが入った。ミットの中でもまだ回転が残っている。
「どうだ!」
「まあ中々だな」
「おい、それだけか」
 タムタムの落ち着いた言葉に少し拍子抜けする。
「もっと他にこう」
「スライダーもあるんだろう?」
 感動が足りない、と言いたそうなフランツにそう返す。
「そのスライダーも見せてくれ」
「よし!」
 彼はそれを受けて大きく振り被る。どうやら言われるとすぐに動くタイプのようだ。再び左腕が唸る。

[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ