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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#38 "gap between ideal and reality"
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は死んだのか。

俺の目の前には"俺"とレヴィがいる。
俺は何故だか少し地面より高いところから "二人"を見ている。
レヴィが"俺"に銃を突き付けている場面を。

実際に俺が経験したそれと違うのは、まず二人がいる場所だろう。
店に囲まれ二人の間にはテーブルがあることから考えれば、恐らくカオハン・ストリートの辺りか?
俺がレヴィに連れられていった路地裏とは全く違う場所だ。

それに二人の表情もまるで違う。
互いに歯を剥き出すように怒りに染まる顔は、俺は勿論あの時のレヴィにも見られなかったものだ。
今思えばレヴィは怒るどころか、何とも思っていなかったんだよな、俺のことなんて……

やがて俺の目の前でレヴィはいよいよ銃を撃とうとしている。
"俺"は目を閉じようともせずレヴィと銃を睨みつけたままだ。

「………」

俺は何も言えずにただ見ていただけだ。
仮に何かを言えたとしても二人に伝わるとは思えなかったけど。

そして、

レヴィが引き金を引く。

全く音は聞こえなかったが。

だが"俺"の頭に穴が開く事はなかった。

レヴィが外したわけじゃない。

"アイツ"の時のように外したわけじゃない。

"俺"が外させたんだ。

銃から弾が撃ち出される瞬間、カトラスの銃身を掴んで弾を逸らさせたんだ。

"俺"はそのままレヴィの胸元を掴んで、何か言い出す。声は相変わらず聞こえないままだが。

「………」

それ以上見ていられなくて目を閉じる。固く、固く、しっかりと。

音も聞こえない、何も見えない、暗闇の世界で自分の身体がぐるぐると回りだすような錯覚を覚える。
気持ちが悪い、吐きそうだ。

俺が見たものは一体なんだったのか。
あまりにも俺の現実とはかけ離れたあの光景は。

あそこにいた"俺"こそが"ロック"なのだろうか。

俺が理想とした自分自身の姿。あんな風になりたいと思っていたのか。レヴィの顔を正面から見据えて、銃にも脅えたりしない、あんな自分に。

………分からないな、今ではもう。

第一今の自分が生きているのか、死んでいるのかすら分からないんだ。
あの光景が夢なのか、何なのかすら。

俺は一体どうなるんだろう?
いや、どうなってしまったんだろう?

わからない わからない わからない

俺には何にもわからない。

何をすればいいのか 誰を頼ればいいのか 何もしなくていいのか 誰も頼ってはいけないのか この街に残った方が良かったのか この街に残らない方が良かったのか 日本に帰るべきだったのか そんなこと考えるべきですらないのか 家で大人しくしてれば良かったのか あの二人にまた会いたいなどと思ってはいけなかったのか

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