暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#29 "homecoming"
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ねえ。少なくともあたしの目の前に立ちゃあ、何の違いもねえ。
そんなもんただの標的でしかねえ。殺られる前に殺るだけだ。

人を殺しておいて自分は殺されたくねえなんて巫戯けた理屈も認めねえ。
それこそ人類皆平等。
神は等しく子供らに接したもうってやつだ。

他人(ひと)に銃向けるって事たあ、自分にも向けられるっていう覚悟を持たなきゃいけねえ。
こんなクソッタレの街でも通用する数少ないルールだろ、それが。

短くなっていた煙草に気付き、灰皿に押し付け、新しい一本に火を点ける。
今夜は未だ眠らない。

未だガキ共が襲撃犯だってのは、姉御も旦那も気付いてない。
ゼロも特に自分から言うつもりはないらしい。
アイツは裏でゲームを仕組んで楽しむタイプじゃねえ。
言わないって事はそれなりの理由があるはずなんだ。
まさか、ガキ共を逃がすつもりか?
……それはねえか。いくらなんでもそりゃあヤバ過ぎる。
ホテル・モスクワと三合会を敵に回す事になっちまう。
それにアイツは安っぽい同情なんぞで動く男じゃねえ。

だとすると、ガキ共の裏が狙いか?
確か、ガキ共を援助してる存在については確認出来なかったって言ってた筈だ。

全く見当がついてねえのか、確証が持てないだけなのか……

アイツは慎重に事を進めたがるからな。迂闊に手え出したらマズいと見たか……

ラグーン商会(うち)はダッチの考えもあって中立を保ってる。
外の勢力が絡んでるにせよ、街の中の連中が絡んでるにせよ、抗争には巻き込まれたくない、と。
そう考えたか?
これは有り得る話だな。

アタシが奴の話を聞いてて一番引っ掛かてたのはそこなんだよな。

"何でゼロほどの男が一発も撃たずに、ただ逃げ回ってたのか"

その後ガキ共と仲良くお喋りしてた、なんてのはどうでもいい。
どうせイカれたガキ共だ。ただの気紛れでも起こしたんだろ。

けどゼロのその態度は気になった。
万が一にもねえと思うけど、相手が子供だから撃てませんでした。なんて巫戯けた理由だったら……

迷わずカトラスの9mm弾を野郎の(ドたま)にぶち込んだだろうな。二挺分ありったけ。

ただ最後の様子を見る限りじゃあ、そんな機会は来ねえかな。
店でバーボン飲み干した時の野郎の眼。
正直ゾクッと来たぜ。相棒じゃなけりゃあ、マジで闘り合いてえって思ったほどだ。

デカいパーティか………
上等じゃねえの。派手に踊らせてもらうぜ。

ゆっくりと髪の間に指を通す。不思議と熱く感じられる髪は何だかとても心地良かった……













【11月2日 AM 2:58】

Side ロック

部屋に戻ってきた俺が一番
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ