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戦国異伝
第四話 元康と秀吉その十三
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「こうしたことをやって上手くいくのはじゃ」
「では殿」
 坂井がその信長に問う。
「人を集める手は」
「ある。これまで通りにしていればよいのじゃ」
「これまで通りですか」
 それを聞いていぶかしんだのは堀だった。
「それはどういうことでしょうか」
「言ったまでだ。今わしは座を治める城下にしておらんな」
「はい、それは」
「その通りですが」
 家臣達は信長のその言葉に頷いた。
「楽市楽座」
「それですね」
「誰でも商いをするようにする。そうすれば人が来る」
 これは信長が自分が治めている領内で行っていることである。それによって今彼の治める領内では確かに人が集まり栄えようとしているのだ。
「そうだな」
「そこでは商いをする者だけでなくですか」
「兵になりたい者も来ると」
「人は色々じゃ」
 また言う信長だった。
「商いをしたい者だけではないじゃろ」
「成程、楽市楽座は商いを栄えさせるだけでなくですか」
「そうした者も集めますか」
「左様じゃ。その雇った兵の給与は栄えた街から入る金や年貢で充分に賄える。いや、賄えるだけの兵を雇うのじゃ」
「それだけですか」
「それだけでよい」
 佐久間にも述べた。
「あまり多く雇ってもそれはそれで金も米も食う。無理はするものではない」
「確かに。その通りです」
 佐久間は主の言葉を成程とした。
「養える兵だけを持てばいいですからな」
「その兵を鍛え法を守らせよ」
 法もだというのだ。
「わしの領内と同じじゃ。悪さは絶対に許さぬぞ」
「では一銭でも盗めば」
「斬れ」
 池田への返答は一言だった。
「そうした不埒者は斬れ、容赦なくな」
「わかりました」
「ではそうした輩は」
「では今よりそれを行うのじゃ」
 ここでも動きの早い信長だった。こうして忽ちのうちに足軽はなりたい者だけがなることになった。それを受けて足軽から百姓に戻る者もいた。しかし中には残る者もいた。
「何だ、猿。御前は残るのか」
「足軽のままか」
「ええ、そうします」
 藤吉郎は笑って仲間達に応える。彼等はもう足軽を止めて百姓に戻るというのである。
「考えましたけれど」
「そうか。わし等は信長様が開墾して下さった田に入る」
「そこで田を植えて畑を耕す」
「元のようにな」
「では私はこのまま」
 あらためて百姓のままでいるというのだ。
「足軽から部将を目指します」
「そうしろ」
「頑張れよ」
「そういえばな」
 仲間の一人がここでまた彼に言った。
「御前元服したんだったな」
「名前変わったらしいな」
「はい、秀吉です」
 その名前になったというのである。
「木下秀吉です。そうなりました」
「そうか、秀吉か」
「いい名前だな」
「猿よりもずっと
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