暁 〜小説投稿サイト〜
とある星の力を使いし者
第175話
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イングのための前動作を開始し、

(フォークボール・・・)

ついつい制理の言葉に身体が反応し、短めのホウキの軌道をやや下へ修正してしまう。
しかし今回もボールは特に曲がらなかった。
普通のストレートが飛んでくる。

「テメッ・・・やっぱ失敗じゃねぇか!!」

慌ててバットの軌道を戻そうとしても、もう遅い。
若干バットが上方向へズレたものの、白球の通る道まで届かない。
それでも、ホウキの柄がボールの端にガチッと接触するのが分かった。

「ぐォォおおおおおおおおッ!!」

上条は叫んだが、ヒットの感触が逃げていくのが手首に伝わる。
ホウキの柄に掠ってチップした白球は、やや斜め上に移動をズラし、そのまま上条の後ろへとかっ飛んでいく。

(おのれ、ミスったか!?)

この勝負にはフィールの概念がない。
バットに当たったボールが前に飛んだら上条の勝ち、それ以外なら制理の勝ちとなる。
ストライクとボールに関しては何となく見た目で決めるだけだ。
しかもここで面倒なのが、負けた方はボールを拾ってこなければならない、という点である。
ただでさえ『敗北者は全力で五分間草むしりの刑』があるのに、遠くまで飛んで行ったボールを追いかけるのはかなりしんどいのだ。
なので、バット代わりのホウキを振り抜いたポーズのまま、上条はこの後の事を考え始めた時だった。
ばしっ、と。
なんか、変な音が上条のすぐ後ろから聞こえた。
訳が分からない上条だったが、対面している制理の顔がギョッとしたまま固まっていて、そこから音もなく血の気が引いていく様子がここまで伝わる。
麻生も麻生でやっちまったな、みたいな呆れた表情を浮かべている。
二人の表情を見て、振り向くと。
そこには、逆三角形の眼鏡に草と土をこびりつかせた、明らかに顔面へ白球を食らったらしい女教師・親船素甘が立っていた。
本来なら白球は素甘のお腹の辺りに直撃する筈だったのだが、上条のバットがボールを掠めたせいで軌道が曲がり、思い切り顔面にぶち当たったらしい。
親船素甘はゆっくりと深呼吸しているが、その身体はどう見ても小刻みに振動している。
あわわわわわわわわわ、と上条が震えだした時にはもう遅く。
上条の懐へ飛び込んだ親船素甘がゲンコツを振り下ろし、そうとは知らず全力で土下座した上条は奇しくも素甘のゲンコツをくぐり抜け、ボールの怒りとゲンコツ空振りの怒りが相乗されて、数学教師は上条の背中をパンプスの尖った踵で思い切り踏み潰した。
その後、彼女は急いで校舎の中に戻っていった。
パンプスで踏まれた背中を手で擦りながら、上条は言う。

「あのタイミングで先生が来るなんてな。」

「さすがは不幸で有名な当麻さんだな。」

「というか、親船先生は何か用があってここに来たんじ
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