暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第3章 白き浮遊島(うきしま)
第27話 ティンダロスの猟犬
[12/12]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
事が伝わるようになるぐらいで終わりますが、酷い状態になると、以後、自らの感情を完全に破壊され、そのシンクロした相手の操り人形状態になる可能性も出て来ます。
 この場合は、シンクロ状態と言うよりも、憑依状態と言うべき状態なのですが。

 俺の問いにひとつ首肯くタバサ。そして、

「今の貴方は口訣を唱える事は出来ても、導引を結ぶ事は出来ない。
 そして、あの魔物の身体を護って居る青い粘液の層が強化されている今、半端な攻撃では彼らに致命的な被害を与える事は出来ない」

 元々、雷を扱う能力なら、森の乙女よりも、伝承上の能力で言うと俺……つまり龍の方が格は上。
 しかし、戦闘開始時の攻撃で右手を使用不能とされた為に、俺では導引を結ぶ事が出来ずに、現状では威力がやや落ちる雷しか召喚出来はしない。
 更に、その毒の浸食によって、早い内にケリを着けなければ、俺達の方がじり貧と成って行くのは間違いない。

 物語上で言うなら、ティンダロスの猟犬とは不死の存在。もっとも、本当に死なないと言うよりは、体力が自然と回復して行くと言う意味の不死だとは思うのですが。

 その理由は、先ほどタバサに舌を黒焦げにされた猟犬の舌が、少しずつでは有りますが、元に戻って行くように感じられます。
 そして、それとほぼ同じ速度で、俺の右腕の黒の領域が広がっています。既に肘を越え、二の腕に近付きつつ有るのは間違い有りません。

 遠距離からの攻撃が無駄だと悟った猟犬たちがゆっくりとこちらに近付いて来る。
 その距離、約五メートル。

「タバサ。そうしたら、俺の霊力の制御を頼むぞ!」

 ふたりの間に繋がる霊道を通じて、自らの思考を明け渡す俺。経験で言うなら、師匠との間でならば実戦でも行った事が有る術。タバサとは練習のみで実戦での使用は当然、初めて。師匠と俺は同じ龍種同士。しかし、人間であるタバサと龍種で有る俺との霊気の質の違いに多少の違和感を覚える。

 俺……いや、タバサが導引を結ぶ。
 近付きつつ有る猟犬の内の一頭が嗤ったように感じる。

 タバサ(俺)が動かないはずの右手を持ち上げた。
 囁くように(強く)、抑揚に乏しく(独特の韻を踏むように)、口訣を唱えるタバサ(俺)。

 渦巻く霊力をタバサが制御し、暴走寸前で踏み止まる。
 自らの体内の霊道を駆け抜ける霊力を、ここまで明確に感じた事など今まではない。
 その霊力を制御し、螺旋の行く先を天頂に抜け過ぎる事なく、目標に固定。

 脊柱から琵琶骨を過ぎ、腕の神経と骨の間を何か巨大な物が通り抜けたような気がする。

 そして……。

 光が……爆ぜたのだった。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ