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蒼き夢の果てに
第3章 白き浮遊島(うきしま)
第27話 ティンダロスの猟犬
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「それで、この死体の処理はどうする心算なんだ? 死病憑きの死体をこのままにして置く事は出来ないだろう?」

 巨漢の傭兵ラウルがそう聞いて来る。厳つい顔に、妙に愛嬌のある瞳で。
 但し、その愛嬌のある瞳に、ある種の思惑と言う物を隠して……。

 ただ、この質問自体は、そんなに不思議な質問と言う訳ではないとは思います。
 ……問題は、この巨漢の傭兵の質問の意図が何処に有るのか、と言う事なんですよね。

 それで、普通に考えるのならば、この死体の処置を任せるのは、この街を護る兵士に通報してやらせるのが正しいでしょう。
 但し、兵士はそのまま放置する可能性が高いと思いますが。
 その理由は、優先度が低すぎますから。現代社会のように保健所が有る訳でもないですし、衛生管理が厳しい世界と言う訳でもない。大量の死体から疫病が発生する事も中世ならば結構有ったはずですから。

 たかが犬の死骸。放置しても問題ないと判断する可能性が大。

 それで俺の判断での放置は論外。死病憑き。更に、エキノコックスも持っている可能性の有る犬の死体三十数頭分の放置など、住民の迷惑にしかならないでしょう。

 傭兵たちに始末させる。
 これは現実的な処置で有り、慈悲深い貴族なら、この選択肢を選ぶ者も居るでしょう。百人の内で一人か二人ぐらいならば。
 そして、この答えならば、この巨漢の傭兵の試しはクリアした事に成ると思います。

 但し、俺の答えは……。

 俺は現界させ続けていた如意宝珠製の七星の宝刀を構えて一振り。
 それと同時に、俺の生来の能力を発動。その一瞬後に、浮かび上がる三十数頭分の骸。

 そして、

「タバサ。すまんけど、大地の穢れを水で清めてくれるか?」

 そう依頼する俺。そして、普段通りの表情を浮かべたまま、無言で首肯くタバサ。
 彼女のトレード・マークとなった杖を、赤黒い死で穢された大地に向け、彼女に相応しい声で呪文を唱える。

 俺と出会う以前と同じ雰囲気と同じ仕草で。
 但し、発動する魔法の質が違う……。

 そして次の瞬間、足元を色づけていた死を連想させる色が、別の無色透明な液体で綺麗に流されて仕舞った。

 尚、これは、水の系統魔法に有る真水を作る魔法では有りません。
 五遁水行に属する仙術の、あらゆる液体を真水に変えると言う仙術です。

 そう。それは、どんな毒液だろうと、ウィルスや寄生虫が潜んでいる液体だろうとも問答無用で真水に……飲み水に変えてしまう仙術です。
 それが、例え、血液で有ったとしても。

 それに、真水で流しただけでは、ウィルスや、寄生虫の除去は出来ませんから。狂犬病も、そしてエキノコックスも非常に危険な病ですからね。

 そして、巨漢の傭兵の方に向かって、
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