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SAO─戦士達の物語
SAO編
五十四話 釣りは待つが肝
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。──以上

「って狙い俺かよ!?」
 どうやら一本釣りされた事がお気に召さなかったらしい。
地上に上がった超巨大魚は、ズシン、ズシンと音を立てながら明らかにリョウに向かって突進してくる。肺魚なのか何なのか知らないが、結構早い。
良く見ると頭の上にはHPゲージが表示されている。つまり、モンスターだ。

「あっ!?お前等!待てコラ!!」
 それを確認した途端に、脱兎のごとくリョウから離れだした周囲の人間達に向かって、リョウが怒鳴る。
唯一逃げないのはサチだけだ。というか……

「で、お前は何してる訳?」
「あはは……腰、抜けちゃって……」
 苦笑しながら言うサチだが、その顔は冷や汗がだらだらだ。
無理も無い。普段からモンスターへの恐怖でこの層以外のフィールドに出る事も出来ない女である。
今は展開がギャグだから平気そうだが、モンスターと言うだけで腰が抜けた辺りトラウマは健在だ。

『つーか……これじゃ逃げらんねー……』
 まさかサチを置いて行くことなど出来ないし、かといって担いで走るにも自分は鈍足だ。
跳ぶのは……自分は良いがサチが眼を回しかねない。

「しゃーねぇ……ったく、せめて動ける状態ならなぁ……」
「ごめん……行くの?武器は?」
「要らん。素手でやる」
 ぽきぽきと指と首の骨を鳴らしながら言ったリョウに、サチはさして心配そうにもせずに微笑む。

「気を付けて」
「おう」
 キリトにサチの救出を頼もうかとも思ったが、恐らくは倒せるだろうし、既にアスナが慌てて此方に戻ってきているのに気が付いていたのでやめた。

「ふっ、とぉ!」
 跳躍。
五メートル程度だった魚との距離を、その一階で一気に詰める。そして……

「そぉら……よっと!」
 空中で左に身体を捻り、ライトグリーンのエフェクト光と共に、両足を左右に広げて回転しながら振り回した。
回転した足が多段ヒットを繰り返して、巨大魚のHPを削る。そこへ……

「勢ィ!」
 最後の思い切り振りきられた右足が、その身体を蹴り飛ばした。

足技 7連続攻撃技 飛脚《ひきゃく》蓮蹴《れんげ》

「ん。行けるな」
 5メートル程吹き飛んで行く巨体を眺めながらリョウはのんびり呟いた。

 キリトから聞いた話だが、攻略組のサポートをしていると言うダンジョン行商人で、筋力値無しの敏捷―極型ビルドで、超高速で動き回りながら“体術だけ”で戦うと言う、クソ度胸の持ち主もこの世界には居るらしい。ならば……

『流石にこれから先も全部体術ってのは無理だが……』
 一気に接近しつつ再び足に力を込める。
横倒しの魚の前で立ち止まり、身体を右に捻って……

『こんだけ的がでかきゃ、俺でもやれる!』
 身体を一回転。後ろ蹴り気味に右足を突き
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