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SAO─戦士達の物語
SAO編
二十三話 刃(やいば)の異名を持つ男
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い関係であるならば、むしろこんな事をしようとする彼を止めるべきではないのか?
アスナの中の“常識”と言う判断材料はそう答えを出しており、それを止めようとするキリトの態度は、混乱以外の物をアスナにもたらさなかった。

「で、でも!このままにしたらリョウはまた──」
「良いんだ」
「え…………」
「兄貴が今しようとしてる事は、俺達にとってどうしようもなく有りがたい事だし、その事に兄貴も納得してる。だから……良いんだ
 キリトの言っている事の意味がアスナはすぐに分からなかった。
恐らく、よく考えれば分かったのだろうけど、反射的に分からなかったことから、アスナは咄嗟にキリトに聞き返す。

「ど、どう言う……意味?」
「そのままの意味だ。ここは兄貴に任せる。その方が良い」
「何を……!」
 良いわけがない。そう言おうとして、ようやくアスナの頭は答えを導き出した。
違う、キリトの言っている事は確かに正しいのだ。
恐らく、自分やキリトが殺人を犯せば、その事実は一生背負うべき罪として永久に自分を苦しめ続けるだろう。
だがリョウは、話の通りならば人を殺しても精神的ダメージが他人に比べ圧倒的に少ない。
つまりは……

「ったく、その言い方じゃまるでお前悪い奴みたいだぞ?」
「別にいいさ、兄貴に肩代わりさせてる時点で──」
「だから、俺が勝手にやってんだからいちいちそう言う事考えなくていいっつの」
 うつむいたまま動かないキリトに、アスナは何も言う事が出来なかった。
彼も、悔しいのだろう。リョウに任せなければならない事が。
だが、たとえ既に一人を殺っていても、それをさらに重ね、更に一生背負い続ける様な覚悟はまだアスナにもキリトにも無かった。

「ほれ、下がってろ。さっさと片付けてくっから」
「でも、でもそれじゃあリョウは……!!」
 自分の事を殺人鬼だと思いながら生きて行かねばならない。
それに恐らく、これだけのプレイヤーの前でそれを行えばせっかくデマだと思われている噂も証明が成され、周りからのリョウを見る眼すらも悪い方向へと変化してしまう可能性は、決して小さくないだろう。
自分達のせいで、そんな事にはしたくない……

「かまわねぇさ」
「え…………」
リョウの口から紡ぎだされた言葉は、とてもやさしく、同時に何処か納得して居る様な……諦めているような雰囲気を孕んだものだった。

「よく言うだろ?人殺しは殺した分だけその罪を背負わなきゃいけないとか何とか。俺、効率悪いのあんま好きじゃねぇしな、より良い方法があるならそっちを選びたいわけさ。で、どうせ何も感じない奴が背負った方が、他の奴が背負うよりこっちの負うリスクは小さいと。俺自身も、それが友人や親類のためなら大歓迎だし。な?効率いいだろ?」
「…………」

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