暁 〜小説投稿サイト〜
MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
閑話V 夕呼の歩む道
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
閑話V 夕呼の歩む道

香月夕呼は自他ともに認める天才である。天才すぎて周りには変人とみられることも少なくないが、夕呼自身は凡人が自分をどう評価するかなど興味がない。学校の勉強は簡単を通り越して無意味であり、夕呼にとって日常は非常につまらないものだった。普段の楽しみと言えば友人である神宮司まりもを弄ることか、ライフワークになりつつある因果律量子論の研究を進めることぐらいだった。
そんな夕呼だったが転機が訪れる。自分の書いた因果律量子論の論文が日本政府上層部のある委員会の目に止まったというのだ。これまでも帝都大の教授などの目にとまり議論を醸してきた自分の理論であるが、こんな大事になるとは夕呼も思っていなかった。そしてそのことが知らされてすぐに帝都大・応用量子物理研究室への編入が決まった。香月夕呼、弱冠17歳の天才が世界的に大きなステージに上がったのだ。
しかし夕呼自身には自分を招いた存在が何であるのかは知らされなかった。夕呼自身もそれはどうでも良いと思っていた。ただ環境が変わるだけだ。まりもで遊べなくなるのは残念だったが、研究ははかどるだろう。そう思いその推薦を快諾したのだった。

「では!夕呼の帝都大編入を祝って!かんぱ〜〜い!!」
「かんぱーい。」
 香月邸ではまりもと夕呼がささやかな祝杯をあげていた。夕呼は面倒くさいと断ったのだがまりもが強引に話を推し進めたのだ。ちなみに夕呼は交友関係がきわめて少なく、友人と呼べるのは巧がいなくなった今まりもだけだったため、二人だけの超小規模なお祝いだったが…。
「夕呼が帝大かぁ。なんか寂しくなるわねぇ。」
「寂しくなるって言ってもねぇ。あんたも来年には大学受験でしょ。帝大の教育学部受けるならまたすぐに会うことになるじゃない。大したことじゃないわよ。」
「そんなことないわよ!私が受かるって保証もないし…。」
 まりもは帝大の教育学部を受験し、今の軍事志向に偏った教育制度を変えたいと考えていた。幸い成績は優秀、内申も良く、このまま順調にいけば合格する可能性はかなり高いだろう。
「なんだかみんなバラバラになっていくわねぇ…。遠田君も軍隊に行っちゃったし、夕呼は帝大だし。私だけ取り残されちゃったみたい。」
「遠田ねぇ……今頃何やってんだか。ま、確かにみんないなくなっていくわね。姉さんたちも仕事で家を出てるし。」
 香月家は早くに親をなくしてから三姉妹で暮らしていた。家の資産はそこそこあったので問題なく過ごせたし、三姉妹共に各分野で天才と呼ばれるレベルだったので金には困っていない。
「そう言えば夕呼のお姉さん達って何やってる人なの?」
「さぁ?詳しくは知らないわ。一番上は脳外科医、二番目は戦場カメラマンやってるらしいけど仕事の話はめったにしないし興味もないから。それに働き始めてからはほとんど会っ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ