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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
閑話U 岩沢慎二という男
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N閑話U 岩沢慎二という男

 日本帝国に存在する兵器メーカーは主に富嶽重工、光菱重工、河崎重工、遠田技研の四社であり、その他は各メーカーの下請けまたは子会社である。現状で遠田技研は戦術機開発に乗り遅れており、一般的に言って帝国の戦術機開発は三社が独占状態であると言える。実際にこれまで開発されてきたF-4J<撃震>、F-4J改<瑞鶴>、F-15J<陽炎>も現在開発されている純国産新型戦術機も三社の共同開発である。
 しかしこの三社の中でも力関係はある。第一が富嶽重工。富嶽重工は大戦時代から主に航空兵器の開発に秀で、貧困状態と言っていい状態の帝国にあって良質で安価な戦闘機、爆撃機を開発してきたことで兵器メーカーとして確たる地位を築いた。その技術力、人材、資金力は帝国の中ではトップクラスで国防省からの信頼も厚い。
 第二に光菱重工。光菱重工の歴史は三社の中で最も古く、大本の光菱財閥の原点は幕末にまで遡る。日本帝国は歴史上様々な政変があったが、五摂家や譜代武家に代表されるように歴史のある家柄の多くは経済、軍事、政治に強い影響力がある。大戦時代も軍部からの発注を受けて多くの兵器を製造しており、現在も変わらぬ政治力を持っている。
 第三に河崎重工。河崎重工はもともと河崎製鉄の子会社であったが、大戦時代に兵器産業に乗り出してから親会社から供給される安価な鉄、合金などの材料を用いることで帝国で頭角を現した。蓄積された技術力がなかったために三番手に甘んじているが、近年では新しい合金やスーパーカーボンといった新素材の研究に力を入れており、三社共同の戦術機開発においては不可欠な存在になっている。
 
 これらの企業は帝国の戦術機開発の中心的存在であり、それぞれの長所を活かし合いつつ米国の技術力に追いつこうとしている。様々な思惑はあるが、重役から下のスタッフまで優秀な人材が揃っており、帝国における兵器開発の中核を担っている。
 しかし、物事には例外というものがある。
 岩沢慎二。光菱重工の社長の二男であり、光菱財閥の創業一族の血を引くものでもある。彼の性質は傲慢な凡人と言えるだろう。光菱の家に生まれた彼は、自分が特別な存在であると信じて疑わなかった。能力云々の話ではなく、その身に流れる血は偉大な一族のものであり、庶民の些事など取るに足らぬと見下していた。それは周囲の環境にも問題があった。彼の思い通りにならないことなど無かった。金も権力もある。家族以外の全ては媚びへつらい、家族は彼を甘やかし続けた。
 しかし、彼の人生は22歳の時に急激に変化する。すなわち徴兵である。光菱の血を引き、父親が大企業の社長ということもあって徴兵される年齢は遅かったが彼は二男。企業と家督は兄が継ぐ、子孫を残すという役割は妹ができる。彼が自身についてどう評価するかは関係なく、客観的に言っ
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