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SAO─戦士達の物語
SAO編
一話 楽園
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此処がバーチャルな世界だと感じる外部からの刺激はほとんどない。恐らく、このゲームの舞台である浮遊城アインクラッドの全百層全て、いや、それがこの世界なのだ。

 それは自分の身体にしても同様だ。アーガス社が開発した、「ナーヴギア」と言うヘッドセットをつけることで「完全《フル》ダイブ」と呼ばれる状態に入ったプレイヤーは、現実世界の自分の肉体から抜け出し、この世界での肉体を持つことになる。
 分かり易くに言うなら、現実の世界で自分の脳から身体へと送り出された電気信号がナーヴギアによって脊髄に伝わる前に延髄でデジタル信号に変えられて、現実の身体の代わりにこの世界での自分の身体を動かすのだ。

 そしてその、現実との完全な隔絶によって作り出されたこのバーチャルの世界で、何千、何万ものプレイヤーが共に冒険することができる。そんな数年前まで空想の話でしか無かった様な事を今俺は、世界初という早さで自分の身をもって体感している。

 ちなみに、今日は初回限定の一万本を買う事の出来た者たちしかこの世界には入ってきていない。そしてその一万人は大体が、このゲームソフトを買うために徹夜してまで並ぶような重度のネットゲーム中毒者だ。かく言う俺も学校休んでまで土曜発売ソフトをの木曜から二日間並んだので人のことは言えないのだが……。
まぁ、それだけの魅力があるソフトだったのだ。
そして期待通り、この世界は俺達ネットゲーマーにとって正に「楽園」だった。

駄菓子菓子(だがしかし)

 俺のその認識はすぐに真逆の認識にすり替わる事になる。
その最初のきっかけは、そんな事を思いながら従兄弟に教えてもらっていた安売り武器屋の戸を叩こうとした時だ。

────

 俺が簡素な木製の扉のノブに手をかけ押し開こうとする……と、殆ど同時に内側から扉が開かれ、俺はそのままつんのめってしまう。
「おっと!」
「うわっ!」
俺の声とドアを開けた人物の声とが重なる。
「すいません、まさか向こう側に人がいるとは……」

 申し訳なさそうにしゃべっている声が聞こえ、そちらを向くと、シンプルで軽そうな革が主体の鎧と、ヘルメットの様な頭の上部を守る兜に身を包んだ青年が立っていた。
人が良さそうな顔で、なかなかの美形だ。まぁこの世界にいる人間は皆作られたアバターなので、むしろブサイクに遭遇する方が難しいが。(それどころか性転換している奴もいるから性質が悪い)

「ああ、いや。俺も不注意でしたから、気にしないでください。」
俺はそう言って頭を下げ、「では。」と通り過ぎようとする。が、

「あ、あの!」
急に呼び止められ、俺はあわてて振り返る。そこには先程の萎れた顔とは打って変わって目を輝かせている青年が居た。

「な、何か?」
突然全く違う雰囲気になった彼
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