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木の葉芽吹きて大樹為す
双葉時代・発足編<後編>
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 昔は兎も角、今では私はかなりの有名人だ。
 つまり、この青年が私の名を知らないと言う事は無いと言う意味だ。
 因みに呼び方に異議を申し立てた所、貴様の呼び方よりもマシだとの事。確かにそうだよね。

「数年前、何故貴様は報復に来なかった?」

 取り敢えず、修飾語をもう少し付けて下さい。

「……貴様が千手の頭領に成った原因の一件、忘れたとは思えんが」

 目の前の青年が言いたい所に気付いて、自然と私の顔が険しくなるのを感じた。
 それに青年も気付いたのだろう。どこか愉しそうにも見える、性格が悪そうな表情を浮かべてみせた。

「千手の木遁使いは情に厚いと聞いていたからな。てっきり肉親が死ねばその敵討ちに乗り込んでくると思っていた」
「……ご期待に添えなくて悪かったな」

 かつて無い程低く物騒な響きの声が、自分の口から零れ出た。
 あの雨の日。この青年が言っている様な事を考えついた自分がいたのは確かだ。
 父上と母上の生死確認に影分身を差し向けた先で、両親を含めた千手の者達の遺体を見つけた時に、両親を喪った事への悲しみと同時に憎しみが私の胸の中で渦巻いたのも。

「あの任務の後、一族の者達はいつ貴様が来ても迎え撃てる様に集落の警備を強化していた。……肝心の貴様が来なかった事でそれも水泡に帰したがな」
「……それで?」

 人食った様な私の言葉に、不愉快そうに青年の眉間に皺が寄せられる。
 手にした白薔薇の馥郁たる香りを私は胸一杯に吸い込んだ。

「あいにくだが、オレは目の前の相手に復讐にいくよりも先にしなければ事を見つけたからな。父上達を本当に殺したのが何なのかを理解している以上、目先の感情に振り回されて壊すべき相手を壊し損ねたら意味が無い」

 そう。
 憎しみが自分の胸の中で湧き上がると同時に、憎しみを生み出し続けているこの世界の無秩序さが構成しているシステムを変えなければ、この連鎖は終わらないと私は気付いた。
 ――だからこそ、私の本当の復讐相手はうちはの青年ではなく、この世界で憎しみを生み出し続けているシステムそのものなのだ。

 この青年が私からの報復を望んでいると言うのであれば、それはお門違いだ。
 私の目指すべき場所にあるのは、彼の死ではないのだから。

「……一つ聞こう。千手の木遁使い、貴様が壊したい相手とは何だ?」
「今のお前に教える気はないね、生憎と」

 そう意地悪に告げてやれば青年が私を睨む、ざまぁ。わざわざ私の憎しみを掻立てに来たのかどうかは知らないが、そうそうお前の思う通りに進むとは思うなよ、このすっとこどっこい。

 ……とか思ってはいるが、わざわざ口に出して言う事はしない。だって怖いんだもの。

「ましてや、オレは頭領だ。頭領として一
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