第六話 信の誓いその十一
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義仙が去るのを見届けようとする。その彼女にだ。義仙はまた言った。
「私は一度死んだけれど」
「何だ?」
「貴女はそうではないわね」
「私は生きていた」
「そうね。けれどこれまで受けた傷が深くて」
そのせいでだとだ。義仙は十兵衛を見ながら話す。
「大人しくしていたのよ」
「そしてその傷を回復させ」
下からだ。宗朗が言ってきた。
「天草の封印を解いたのも」
「そうよ。スサノオよ」
他ならぬだ。彼がしたというのだ。
「それはわかるわね」
「確かに。それなら」
「私達のこの騒乱を終わらせたいのなら」
それならばどうするべきか。義仙は十兵衛達に話す。
「あの方を倒すことね」
「言われずともそうする」
十兵衛が強い言葉で答える。
「御主は倒す。天草もな」
「ではそれを誓いにして」
「今は去るがいい」
「見逃してくれるのかしら」
「戦意を消した相手と刃を交える趣味はない」
それでだとだ。義仙に告げた。
「ではまたな」
「ええ、またね」
二人は微笑みさえ浮かべ合ってだ。そのうえでだった。
義仙が姿を消した。これが戦いの終わりだった。それが終わりだ。一行は。
響鬼がだ。宗朗に言ってきた。
「とりあえずな」
「あっ、はい」
はたと気付いた顔でだ。宗朗は響鬼に応える。
「あの娘のことですよね」
「話してくれたあの娘だよな、あの娘が」
「そうです。柳生十兵衛です」
まさにだ。彼女こそがだというのだ。
「あの娘がそのです」
「そうだな。じゃああの娘を交えてな」
「あらためてこれからのこともですね」
「ああ、話そうか」
「わかりました。それでは」
こう話してだった。一行は。
まずは十兵衛が降り立つのを待った。その彼女は。
戦いが終わり暫くは不服そうだった。しかし何時までも宙にいても仕方ないと判断したのか。
地に降り立った。それから周りに話した。
「ええと。まさか生きているなんて」
「あれっ、口調が」
「はい、感じも何か」
そんな十兵衛の話と表情を見てだ。明日夢とあきらが言う。
「変わったけれど」
「穏やかというか幼い感じに」
「普段はこんな感じなんだ」
宗朗がその二人に話す。
「十兵衛はね」
「そのことは実際に御聞きしましたけれど」
「本当だったんですね」
「普段は特に攻撃的でもないから」
宗朗はこのことを保証した。
「だから。ここはね」
「そうだな。道場に戻ってな」
「そのうえで」
斬鬼と朱鬼が話してだった。そのうえで。
彼等はだ。道場に戻りだ。十兵衛にだ。ことの顛末を話すのだった。その戻って来た侍に。
第六話 完
2011・9・14
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