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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・前編(ユウリ視点)
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別に何でもない! いいから離れろ!」
 怒鳴り散らすように叫ぶと、ミオはびくつきながら慌てて俺から距離をとった。こうなるとわかってて毎回近づいてくるのだから余計タチが悪い。
「ユウリちゃん、起きたー?」
 今度はザルウサギのシーラがテントの入り口から顔を覗かせる。二人が起きているところを見ると、どうやら俺は寝坊をしてしまったようだ。ザルウサギはともかく、寝坊女よりも遅く起きてしまうとは、我ながら情けない。
「あ、うん。今起きたところだよ」
「そっかそっか〜。それなら良かったよ☆」
「……」
 何となく二人に心配されるような雰囲気に気まずくなった俺は、何事もなかったかのようにテントから這い出た。
 外に出た途端、冷気を帯びた風が顔を撫でる。ここの大陸は夏が訪れたばかりだというのに、晩秋のように寒い。常緑樹が鬱蒼と広がる森の向こうには、すでに白い山肌の山脈が横に延々と続いていた。
「やっぱりこの辺は寒いね。向こうの山の方なんか雪が積もってるもん」
 白い息を吐きながら、俺と同じように眼前の景色を眺めるミオ。隣にいるシーラも頷く。
「んだよ、まだ寝てんのかよ」
 テントの反対側から思わずベギラマをぶちこみたくなるようなことをほざいてきたのは、バカザルのナギだ。だが、今回に関してはこいつの言うとおりなので、ここはあえてバカザルを睨み付けるに留めておく。
「いつもは馬鹿みてえに早く起きてすぐ先に行くぞとか言いだすくせに、珍しいこともあるもんだな」
「ベギラマ」
 ぼおおぉぉぉん!!
「ぎゃああああっっ!!」
 駄目だ、やっぱり耐えられなかった。
「ナギってば、なんでいい加減学習しないかなぁ……」
 そんなことを言っている間抜け女の方にこそ、今の言葉をそっくりそのまま返してやりたい。
「それよりユウリちゃん、ナギちんの鷹の目だと、あと半日ぐらい歩けばムオルに到着するみたいだよ」
 この一連の流れを『それより』で流すザルウサギの言葉に、俺は眉をわずかに吊り上げる。
「あと半日か。船から見るより、案外遠いんだな」
 そう。今俺たちが向かっているところは、ムオルという見知らぬ町である。
 ジパングを出発したあと、ヒックスたちに暇を与えるため、ポルトガに戻ることにした。なぜかと言うと、ガイアの剣を探す前に、自分達のレベルを底上げするからだ。長丁場になりそうなので、拘束時間の長いヒックスたちには一度故郷で待機してもらうことにしたのだ。
 だが、ジパングからポルトガに向かう途中、突然アクシデントは起きた。海中にいた魔物の群れが船体に激突し、一時転覆しそうになったのだ。幸い船に穴が空くことはなかったが、船体の一部が破損しているということで、急遽近くの港に泊まることになった。
 修理を行った船員によれば、材料があれば直せるということで
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