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後ろ髪
第二章
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「僕達も」
「立とう、そしてだ」
「先生が言われる通り幕府を倒し」
「そして新しい国を造ろう」
「そうしましょう」
 二人で誓い合った、そのうえで同志達と共に江戸において動いた。その中には大金を使って伝馬町にいる松陰の為に手を尽くした。
 だが高杉は事情が出来て萩に戻らなくてはならなくなった、それで桂と別れの挨拶を交えることになったが。
 この時だ、高杉は名残惜しそうに桂に言った。
「先生のことが気がかりですが」
「気持ちはわかる、だが仕方ない」 
 桂はその高杉に慰める様に言葉を返した。
「どうしてもということだからな」
「そうですね、それでは」
「江戸のことは僕達に任せてだ」
 そのうえでというのだ。
「君は萩に戻ってだ」
「やるべきことをやることですね」
「人はその時にせねばならないことがある」 
 こうもだ、桂は高杉に話した。
「君の場合はだ」
「今は萩に戻ってですね」
「ことを為すのだ、ではいいな」
「それでは」
 高杉は桂の言葉に頷いた、そしてだった。
 一人萩への旅路に着いた、藩の城があるそこに戻ろうと足を向けた瞬間にだった。
 後ろ髪を引かれる気がした、それでつい振り返ったが。
 振り返っても仕方ない、そう思いなおして萩に向かって歩きはじめた。そうして萩にまで辿り着いて。 
 この地でやらねばならぬことを為そうと思ったその時にだ、家の者達に言われた。
「あの、実はです」
「先日江戸から早馬が来まして」
「松陰先生がです」
「伝馬町において」
「そうなったか、危ういと思っていたが」
 今の幕府の沙汰を見るとだ、高杉は松陰の死を聞いて愕然として言った。
「そうなったか」
「はい、それでご遺体はです」
「桂さん達が丁重に葬ってくれたとのことです」
「罪人ではあってもです」
「そうされたとのことです」
「それは何より、しかし」
 高杉は奈落に落ちていく様な気持ちのまま話していった。
「後ろ髪を引かれる気がしたが、江戸を離れる時」
「それは何といいますか」
「予感ですか」
「それですか」
「そうだったのか、僕が萩に向かう途中で首を打たれるとは」
 高杉は立っていた、だが。
 次第に涙が流れてきた、そうして家の者達に言った。
「何ということ、無念で残念だ」
「お気持ち察します」
「ですがもうです」
「先生は」
「わかっている、だがそれでも今はだ」 
 泣きつつだ、高杉はさらに言った。
「泣いていいか、そして泣き終えたなら」
「それならですか」
「それからですか」
「またですか」
「動く、先生の無念は必ず晴らす」
 こう言ってその場で泣き崩れた、それから高杉は泣きに泣いた。
 だが泣き終えると再び立ち上がった、そのうえで家の者達に話した。
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