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大阪の鵺
第六章
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「確か」
「そうだったの」
「だからね」
「こうしたことは言っても仕方ない?」
「そうじゃないかな」
「それじゃあ仕方ないわね、けれどね」 
 それでもとだ、英梨は武藤の言葉に頷きつつ鵺に顔を戻して告げた。
「それでも近所迷惑は考えて」
「歌うことか」
「千年前それで死にかけたんでしょ」
 御所のこのことも話した。
「だったらね」
「尚更か」
「気を付けないと駄目でしょ」
 こう告げるのだった。
「そうでしょ」
「確かにな」
 鵺もその指摘には頷いた。
「それは」
「それじゃあね」
「これからはか」
「ビルの音楽教室がそれだから」
 防音室になっているからだというのだ。
「そこでよ」
「歌うことか」
「歌いたいならね」
 それならというのだ。
「そこで歌ってね」
「音痴と言われたのははじめてだ」
「それ嘘だよね」
 即刻だ、武藤は鵺に突っ込みを入れた。
「その歌唱力で」
「実際ないぞ」
「本当かな」
「絶対に言われても勘違いしてたわね」
 英梨はこう言い切った。
「千年の間」
「そうだろうね」
「ええ、こんな音痴ないからね」
「酷過ぎるからね、ただ歌うのはね」
「誰にも止める権利ないし」
「それはいいけれど」
 こうは言うのだった。
「別にね」
「そのことはね」
「ただね」
「うん、問題は歌う場所で」
「そこをちゃんとしてくれたら」
「いいね」
「そういうことだから」
 英梨は鵺に顔を戻して言った。
「これからはね」
「カラオケはか」
「そこでお願いね」
 音楽教室でというのだ。
「いいわね」
「そこまで言うならな」
「そういうことでね、若しまたここで歌ったら」 
 屋上でというのだ。
「管理人さんも怒ってここにおお巡りさん来るわよ」
「流石にそれは困るな」
「だったらね」
「これからはか」
「そこはしっかりとね」
 音楽教室、防音が整ったそこで歌う様にというのだ。
「してね」
「それではな」
 鵺も頷いた、そして以後このビルの屋上から夜奇怪な鳴き声が聞こえることはなくなった。その代わり毎晩音楽教室で歌う妖怪がいる様になった。
 そうなってだ、英梨は武藤に言った。
「何よりよ」
「うん、あの音痴な歌が聞こえなくなってね」
「そうなってね」
「本当によかったね」
 二人はたまたま一緒になった登校中の電車の中で共に立った状態で話した。
「これで一件落着となって」
「本当にね、ただね」
「ただ?」
「いや、妖怪にも音痴っているのね」
 英梨はこのことについても言った。
「それでね」
「その歌が問題にもなるんだね」
「思えば千年以上前も」
 その時もというのだ。
「御所でああして歌って」
「それでだね
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