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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
プロローグ 夢見る少女の望む夢
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 自分の身体は自分が一番知っていたわ。


 子供の頃からずっと……


 だから、次こそはきっと治るとお父さまが励ましても……


 大丈夫よとお母さまが抱きしめてくれても……


 安心することも、悲しくなることもなかったわ……


 だって知っていたから……わたしは自分が長く生きられないことを……

 

 ……治らないことを 



 お母さまが泣いていることも……


 お父さまが嘆いていたことも知っていたわ


 わたしの身体が治らないと理解してからは、わたしにもっと優しくするようになっていきました


 妹にはきつく当たるお姉さまも、わたしに接する時は優しくなりましたし


 妹もわたしによく甘えてくるけれど、やっぱり優しく接してきたわ



 みんなみんな優しくしてくれたわ



 そんな優しいみんなが、よく聞いてきました


 何かしてほしいことはあるか?


 何か欲しいものはある?


 いいえ。ありません


 わたしにはみんながいるだけで十分です


 優しく暖かく穏やかな……楽園のような世界

 
 小さな世界


 わたしは幸せです……











 本当に?



 わたしは本当に幸せなの?



 ずっと同じ場所にいることが?


 何もさせてくれないことが?


 一代限りの地位を与えられることが?


 動物たちに囲まれることが?


 ……一人でいることが?



 
 みんながわたしを大好きだってわかっています。


 優しくて、わたしを傷つけたくないということも知っていました。

 
 でも、だからみんなは……近づいてきません。


 傷つけたくないから、わたしの中に入ってこない。


 踏み込んできてくれない。


 わたしが傷つくのが怖いから?


 それとも、自分が傷つくのが怖いから?


 わからない……


 それは、わたしにもわからない


 きっと、みんなもわかっていない……


 なら、わたしもみんなに傷ついて欲しくないから……


 だからわたしは我慢します


 我侭も言いません


 欲しがらないし……望みません









 言っても、叶えられませんから



 裸足になって好きなだけ走り回りたい


 料理を作ってみたい


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