第八十四話 ボヘニアのヂシュカ
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「その事ですが……」
ヂシュカは「麦畑の馬蹄」亭でチェック貴族達が暴走する寸前だった事を説明した。
「……なるほど。ご苦労様でしたヂュシカ君。貴方のお陰で無用な血は流れずに済みました」
「ですが、ここ最近の『熱』は、私の手に負えなくなってきました」
ヂシュカは心配そうに言った。
「ヂュシカ君お願いがあります。もう少しの間でいい、彼らを抑えて置いて下さい。私に考えがあります」
「それはもう、言われるまでもありません。今暴発しては何もかも終わりです。して、何を為さるお積りですか?」
「今の状態で蜂起しても、瞬く間に鎮圧されてしまうでしょう。ならば、ロマリアの力を借りて、独立の大義名分を得ようと思います」
「ロマリアの……ですか? 失礼ですが神父は……」
「表向きはロマリアの敬虔な神父ですが、ご存知の通り新教徒です」
フシネツ神父は新教徒であった。
だが最初から新教徒だった訳ではない。フシネツ神父が新教徒に趣旨替えしたのはハルケギニア大寒波の時であった。
先の大寒波によってゲルマニアの都市部の食糧の備蓄が底を尽いた。
だが作物を作る農村部では辛うじて一冬越せる分の食料は確保できたが、一部のゲルマニア貴族は、その噂を聞きつけ、スラヴ系の農村部において食料の徴発が行われた。
ゲルマニア系の農村は徴発の被害にあわず、スラヴ系の農村を狙い撃ちにした為、スラヴ系の農村部では多くの餓死者を出した。しかも、この徴発行為は公表される事は無かった。
チェック人ながらも神父であるフシネスは、ゲルマニアのスラヴ人に対する仕打ちを見て、ロマリア連合皇国にこの事を報告したが、ゲルマニア貴族と癒着のある高位の聖職者によって握りつぶされてしまった。
後でその事を知ったフシネツ神父は、ロマリア教の現状に絶望し、チェック人の独立独歩と同時にロマリア教の改革を目指す為に新教徒に趣旨替えし、今に至るようになった。
フシネツ神父がジャガイモの栽培を始めたのも、チェック人を始めとしたスラヴ人達のために、少しでも慰めになるようにとの思いもあった。
ハルケギニアでのジャガイモの評判は、その不恰好な形と、ロマリア教保守派のネガティブキャンペーンのせいもあってすこぶる悪い。
マクシミリアンは新世界からもたらされたジャガイモを、水魔法と土魔法を使った品種改良によって生成した……という事にしてハルケギニアに紹介した。他の動植物も同様である。
幸い、新世界の存在はばれる事はなく、世間はトリステイン国王にして偉大なメイジであるマクシミリアンによって作られた食物。ジャガイモやショコラ、トウモロコシを受け入れた。
ジャガイモは当初、その不恰好な形は大いに嫌われ、誰も食べようとはしなかったが
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