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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その3
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の色を現した。
「真ですか……ディブさま。
あのPFLPがらみで……」
「そうです。あなた方は私共の大切な商売相手です。
どうぞ、デルターフォースが来る前に、大使館を閉鎖なさって、お逃げなさい」
「ご連絡ありがとうございます」
「いえ、いえ。ソ連という、米国の競争相手(ライバル)
あなた方の存在があってこそ、冷戦という最高のゲームが行えるのですから」
支店長は、深々と頭を下げて、慇懃(いんぎん)に謝辞を述べた。
「常日頃からの、多大な援助。ソ連政府を代表して、感謝申し上げます。
50年前の経済封鎖の時、共産党に7500万ドルの資金を貸し出していただいた件など……」
(1920年のドル円レート、1ドル=2円。1920年の旧円は2020年現在の300円相当する)
会長は満面に笑みをたぎらせながら、
「私共の狙いは、通商を通じた相互理解です。
ビジネスの世界に敵味方はありますまい。ハハハハハ」





 レバノン沖に展開する米海軍の空母打撃群。
その周囲を護衛するように並ぶ戦艦「アリゾナ」「ニュージャージ」「ミズーリ」「ウィスコンシン」
 BETA戦争での艦砲射撃の対地火力を再認識した米海軍は、モスボールされていた全戦艦と巡洋艦の現役復帰を命じた。
 30有余年の眠りからたたき起こされた戦艦は、黒煙を上げ、(くろがね)の巨体を揺らしながら、再び戦場に戻ってきたのである。


 戦艦「ミズーリ」といえば、我々日本人には忘れられぬ戦艦である。
武運拙く敗れ去った大東亜戦争の折、昭和20年9月2日に城下の(ちかい)を結ばされた場所の一つであった。
 既に8月15日のご聖断により、自発的に武装解除していた帝国陸海軍は、これにより完全に武装解除され、その後7年の長きにわたる占領時代が幕を開けるのであった。
日本民族が歩んだ苦難の7年間に関しては、後日機会があるときに触れたい。
 
 では、過ぎ去った歴史より、BETA戦争の世界の1978年に、再び視点を転じたい。
レバノン派遣艦隊の旗艦「アリゾナ」の艦橋では、艦長以下幕僚たちが真剣に、ゼオライマーパイロット、氷室美久の救出作戦を練っていた。

「空母エンタープライズの調整は、まだか!」
 艦橋内に、怒号が響き渡る。
副長の声に叱責され、通信員は、おずおずと船内電話の受話器に手を伸ばす。
「F4戦術機の兵装転換に、手間取っているそうです。
なんでも、新型のミサイル。フェニックスミサイルの準備に……」
集束爆弾(クラスター)だろうと、ナパーム弾だろうと、早く準備させろ!」
副長は怒りのあまり、真っ赤になって叫んだ。

 夏季白色勤務服(サマーホワイト)姿の艦長は、心にある不安を鎮めるために、マドラスパイプを燻らせながら、指示を出す。

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