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Fate/WizarDragonknight
人魚姫の夢
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思ってないし。それで、何か問題ある?」

 さやかはそう言って、ゆっくりとほむらの拳銃、その銃身に触れる。
 驚いたほむらは、慌てて拳銃を引っ込めた。

「ほむらちゃん?」
「……やられたわ」
「え? ……!」

 そこで、まどかはほむらの銃の異常に気付いた。
 さやかに触れられた部分が濡れている。彼女の手を見比べれば、確かに彼女の手のひらから、雫が滴っている。

「……普通の水なら、発砲に問題ない……けど」
「なら、試してみる?」
「……!」

 さやかの挑発に乗ったほむらは、そのままさやかへ向けて引き金を引く。
 だが、銃は無情にも、空打ちの音を響かせるだけだった。

「ファントムのあたしの水が、ただの水なわけないでしょ?」
「……」

 ほむらは銃を盾に入れて収納し、また新たな拳銃を引っ張り出した。

「おお、さすがの四次元ポケット」
「私なんか、相手にしていないって感じね」
「まあね」

 さやかの瞳が、サファイアのような輝きを宿す。
 人間離れしたその美しさに、まどかは思わず息を呑んだ。

「……私が貴女を相手取るのに、一人で来ると思う?」

 ほむらの落ちた声に、さやかの眉が吊り上がる。

「ああ、あの黒い女の人? あの人連れてくるのはずるいよ」
「……キャスターは使わない。それに、この学校には、私以外にも参加者がいるのよ」
「参加者?」
「……聖杯戦争の?」

 まどかが呟くのと同時に、その足音が人のいない廊下に響く。
 さやかの背後から、新たな人物が姿を現したのだ。

「確かアンタは……」
「隣のクラスの柏木さん、だよね?」

 まどかがさやかの言葉を引き継ぐ。
 三人と同じく、見滝原中学の制服を纏った彼女。黒いボブカットに切りそろえた髪を揺らす彼女、柏木鈴音(かしわぎレイン)の特徴は、その左目のほくろだろう。半年前の同級生が引き起こした事件の時は欠席していた彼女は、静かにさやかを凝視していた。

「……暁美さんから、おおよその事情は聞いています」
「へえ……サーヴァントを呼ばずに、同級生を頼るんだ。あたしも舐められたもんだね」
「暁美さんのサーヴァントは、何をするにも規模が大きすぎますから」
「……アンタも参加者だったんだ」

 さやかは冷たい目を鈴音へ向けた。
 そのまま、さやかが正面から鈴音へ向き直ろうとすると。

「動かないで」

 冷たい声が、廊下を支配した。
 まどかの位置からだと、それまでほむらとさやかが壁になって見えなかった。
 いつの間にか、見知らぬ女性が、腕にある砲台をさやかの背中に突き付けている。
 長い金髪と長身長。まどかにとっては、憧れの眼差しでしか見れない女性が、さやかへ殺意を向けていた。

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