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星河の覇皇
第八十三部第一章 防衛ライン到達その八

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「艦隊の最速でな、整備は進みながらでもだ」
「行いますね」
「艦艇のそれは」
「そうしていきますね」
「とにかく追い付かれないことだ、それに」
 さらにと言うのだった。
「落伍する艦艇もだ」
「出さない」
「そのことも重要ですね」
「今は」
「そちらも」
「そうだ、そしてどうしても落伍する艦艇が出るならば」
 その時はというと。
「乗員は艦を出てだ」
「そうしてですね」
「別の艦艇に移り」
「そうして」
「次の艦に乗る」
 そうせよというのだ。
「艦艇はまだ取り返しがつく」
「しかし乗員は違いますね」
「人は」
「そうはいかないですね」
「替えが利かないですね」
「ハードウェアは替えが利く」
 即ち兵器はというのだ。
「資源や予算の関係もあるが」
「造ればいいですね」
「例え壊れても」
「そして脱落しても」
「そうなる、しかしだ」 
 それでもと言うのだった。
「ソフトウェア、人材はだ」
「そうはいかないですね」
「どうしても」
「死ねばアッラーの下に行ってしまいます」
「戻ることはありません」
「人の人生は全てアッラーが定められているが」
 それでもというのだ、イスラム世界ではこの世の全てはアッラーが定めていると考えられているので人間一人一人の人生もそうだと考えられているのだ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「見捨てていいとはなりませんね」
「人の一生はアッラーが定められていても」
「それでもですね」
「見捨てる訳にはいかないですね」
「人を見捨てる者は人の上に立つ資格なぞない」
 アブーは言い切った。
「それこそな」
「左様ですね」
「だからですね」
「将兵達にはそうした時は退艦してもらい」
「そしてですね」
「新たな艦艇に乗ってもらうまで、ですね」
「別の艦艇にいてもらう、とにかくだ」
 まさにというのだ。
「兵器は失ってもな」
「それでもですね」
「人材を失う訳にはいかないですね」
「替わりが利かない」
「だからこそ」
「戦争に犠牲はつきものだ」
 このことは絶対のことだ、戦争を行って誰も死なないということはない。それがどれだけ圧倒的な勝利だとしても。
「しかしだ」
「それは最低限に抑える」
「それもまた戦争ですね」
「若し人材を無駄に使うなら」
「その時は勝てても」
「国が亡びる」
 戦争に勝とうともというのだ。
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