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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
瞳の奥に潜む影
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る回数も多いのです。どうやらこの先に広がる草原に巣くうオオカミが増えて、獣たちが逃げて来たらしいのですが……」

 村長は一度言葉を切り、疲れきったように首を左右に振る。

「我々ではオオカミを倒すことなど到底出来ませぬし、荒らしに来た獣を追い払うにしても、毎晩のように押し寄せて来る故、村人たちは疲労が溜まってしまい、ついには病に罹るものまで現れました。……このままでは、我々は冬を越すことが出来ずに全員飢え死にしてしまいます」

 口を閉じ、再びがっくりとうなだれる。マサキがトウマに視線を送ると、トウマはしっかりと頷いた。

「それなら、そのオオカミを僕らが倒しますよ」

 その言葉を聞いた途端、今まで暗かった村長の顔が一気に希望の色を携える。

「本当でございますか?  ……ああ、ありがとうございます。これで村は救われます……」

 涙を流しながらの感謝の言葉を聞き終わるか終わらないかのところで、既に二人は駆け出していた。


 このクエストもあらかじめキリトから情報を得ていたもので、マサキの柳葉刀、トウマのダークソードの強化素材がドロップする《ナイトウルフ》を二十体狩ってくるというものであり、強化素材集めのついでに受けておけばそこそこのコルとボーナス経験値が手に入るという、なかなかに魅力的なものだった。村長の話があれほどまでに長いというのは少々予想外だったが、特に問題が生じるわけでもない。この村に来るまでも、そして来た後もプレイヤーには一人も会っていないため、全員が全員このクエストのことを知っているということはないだろうが、それを加味しても、今この周辺にいるプレイヤーはマサキたちくらいのものだろう。つまり、行ったら討伐対象が他のプレイヤーに全て倒されていた、という最悪の事態は想定しなくても良いということになる。

 これにはトウマも同感の様で、走るペースも少し余裕を持ったものになっている。また、それによって頭が冷えたのか、時折覗かせていた動揺も、今はすっかり鳴りを潜めている。これならば少なくともモンスターと相対したときに錯乱状態に陥ることはないだろうと考え、マサキは少しだけ安心した。――ただ、その“安心”という感情に対しての驚きの方が、マサキの中ではずっと大きかったというのもまた事実なのだが。

 そんなことを考えながら進んでいると、今まで木々がうっそうと茂っていた森が急に開けた。地面には短い草が生え、風が吹く度にそよそよとなびいている。キリトやクラインと共に狩りをした《はじまりの街》周辺の丘と似たような雰囲気だが、暗闇に覆われている分、マサキには怪しさと冷たさが強調されて見えた。
 しばらく二人して草原を眺めていたが、マサキのセットした索敵(サーチング)スキルに敵モンスターを表す光点が三つ表示されたのを見て、
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