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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
瞳の奥に潜む影
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 一時間後、マサキたちの姿は《はじまりの街》の東に位置する《イニジア》という小規模な村にあった。この村の先にはじまりの街周辺よりも一段階強いオオカミが出現するエリアがあり、そこで自身のレベルアップと素材の収集を行うためだ。
 マサキはここまでの戦いで多少耐久値が低下してしまっていた柳葉刀をNPCの鍛冶屋に研いでもらい、残ったコルで回復ポーションを買うべくアイテムショップへと向かった。

 マサキがアイテムショップまで到達する(鍛冶屋からたかだか50mの距離だが)と、それを待ちわびていたかのように、今までアイテムショップの簡素な石壁に体重を預けていたトウマが背を離し、マサキに向き直った。その背中には、この村に入るまではなかった大き目の片手直剣が吊り下げられている。それは今まで彼が装備していたものよりも、明らかに長く、幅広で厚みもあり、何より重そうだった。

「待たせた。……それが新しい武器か?」
「ああ。《ブラックソード》って名前らしい。とりあえず初期装備の《スモールソード》よりは性能も良いし、強化素材もここらで取れるから、結構得なんだよ。別の街には《アニールブレード》って名前のやつがクエスト報酬にあるんだけど、こっちの方が重くて攻撃力が高いんだ。……まぁ、すぐに強化限界が来ちまうから、あんまり人気ないけど」

 トウマはにっと笑うと、背中の黒塗りの剣を手でポンポンと叩いて見せたが、何かに気付いたようにはっと表情を曇らせ、「人から聞いた話だけど」と付け加えた。マサキは若干の疑問を持ちながらも頷き返し、二人で店内へ入り、ありったけのコルで回復アイテムを買い漁ると、ポーチの容量を目一杯使って収納する。二人の準備が終わると、今度は村長の家へと向かった。

 村長の家と言っても、他の民家と指して違いがある訳でもなく、質素な石の壁で出来た箱の外に、雀の涙程の庭があるだけだった。だが、そんなことは気にも留めず、二人は家の内部に入り込み、もちろんNPCである白髪に白髭の翁に話しかける。老人は二人を確認すると、陰鬱な声色で話し出した。

「おお、これはこれは、旅の剣士様。ようこそいらっしゃいました。……本来ならば村を挙げて歓迎したいところなのでございますが、申し訳ありません。何分、今はそのようなことが出来る状況ではなく……」

 一万人いるプレイヤー全員に対して村を上げて歓迎していたら、間違いなくここの村人は全員餓死するだろうとマサキは思うが、そんな思考をすっ飛ばして、うなだれる村長の頭上に現れた金色の感嘆符を確認し、トウマと二人で「何かお困りですか?」と問いかける。老人は声色を変えぬまま、ぽつりぽつりと話し出した。

「実は、最近村の畑を獣が荒らし回るようになりまして。……同じことは前からもあったのですが、今回は目に見えて獣の数も、荒らしに来
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