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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
燃える極東 その3
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「かかれぇ!日本野郎(ヤポーシカ)の横腹を突くのだ。
如何に堅牢な機体とは言えども、横入れされては踏みとどまることも出来まい」
号令をかけた指揮官機が右腕を背面に回して、77式近接戦用長刀を背中の兵装担架から抜き出す。
指揮官自ら長刀を振るい戦う姿勢を見せれば、円居(まどい)は奮い立つ。
推進装置を全開にした30機余りの軍勢が、怒涛の如く突進してきた。
 突撃砲に装弾数2000発の弾倉が差し込められると、隙間無くゼオライマーに向けられる。
仁王像の如く起立する、天のゼオライマー。
全長50メートルの機体は、前面投影面積の高さゆえに狙いやすく、格好の標的。
 如何に強固な次元連結システムがあっても、パイロットは生身の人間……。
人海戦術でマサキの体力や気力を奪い、ゼオライマーの鹵獲や殲滅を狙う。
 
「自走砲と戦車隊は前へ、日本野郎(ヤポーシカ)を撃ち竦め、其の間に奴が首を取るのだ」
戦術機部隊が動くより早く、攻撃ヘリの一群がゼオライマーに奇襲をかける。
 羽虫の呻る様な音を立てて近づく攻撃ヘリコプターMi-24「ハインド」
ある時は低く、ある時は高く、獲物を狙う(たか)其の物……。
機銃が呻り、ミサイルが轟音と共に飛び交う。
後より続くは100台以上のT−54/55、T−64戦車と、2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲。
落雷の様な轟音が段々と近づいて来る。
 薄く全面に張り付けたバリア体によって、そのすべてを凌いでいる事に美久は疑問を持った。
一思いにメイオウ攻撃で灰燼に帰せばよいのに……
やはり秋津マサトの肉体を乗っ取った際、精神が幾分か取り込まれた為か……
あの心優しい青年の気持ちが忍人(にんじん)・木原マサキに変化を与えたのであろうか。
コックピットの中で、椅子に深く座り込む男の事をモニター越しに眺めていた。

 犠牲をいとわぬソ連軍の挺身攻撃……、狙いはパイロットの戦意喪失か。
マサキは、既にソ連軍参謀本部潜入の時以来の疲労が出始めていた。
数時間に及ぶ逃避行は、彼の肉体から体力を削り取るには十分であった。
 操縦席に項垂れていた彼は、段々と気怠くなる肉体を奮い立たせるべく、興奮剤を飲む。
僅かに残った水筒の水を飲み干すと、布製の入れ物ごと空の容器を放り投げた。
「この俺としたことが……、奴等の計略に乗せられるとはな」



 
「全機射撃許可、 撃て!」
指揮官の号令の下、一斉射撃が開始された。
30機余りの戦術機はゼオライマーを囲むや否や、雨霰と矢玉を浴びせかける。
微動だにせず佇む白亜の巨人に向け、火を噴く20ミリ突撃砲。

「奴の武装は両手に付けられたレーザー砲2門!接近して一刀のもと切り捨てれば勝算はある!」
連隊長がそう叫ぶと跳躍し、長刀を振るいあげ
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