暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
ガンバルクイナ
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どうすればいいんだよ……!」

 ハルトは毒づきながら、二人を追いかけようとガラスのない窓に足をかける。その時。

「一つだけ、言わせていただいてもよろしいでしょうか?」

 それは、事務所に戻ったはずの医者からの言葉だった。
 サングラスを胸ポケットからのぞかせたままの彼は、静かにハルトへ語った。

キャンサー(cancer)という単語には、蟹という単語の他にも、癌という意味があります」
「癌? 癌って……病気の?」
「ええ。ムーンキャンサーを直訳すれば、月の癌と読み替えることもできますよ」
「月の癌……? それだと、ますます意味が分からないな」
「まあ、十中八九私の推論は外れているでしょうが。中年の戯言と聞き流してください」
「いえ……ありがとうございます」

 ハルトは医者に礼をして、響とアンチの後を追いかけて、窓から飛び出していった。

 そんなハルトの後ろ姿を見つめながら、医者は静かに、しまったサングラスを再びかけた。



 見滝原南。
 廃墟の一角の、建物の内部。
 ハルトたちがアンチを保護していた頃、ハルトたちと戦い、唯一の生き残りである怪鳥は、陽の光が届かない室内で静かにその身を屈ませていた。
 この廃墟の住民も粗方腹に放り込み、体も十分休ませた。
 やがて時が経つと、その肉体に変化が起き始めた。
 メキメキと骨格が揺れ動き、肉体が膨れ始める。
 人間に等しい大きさのそれは、人より二回り上の大きさに成長していく。皮膚が突き破られ、その内側から新たな表皮が顔を覗かせる。
 そして。
 凶悪なその鳴き声を、怪鳥は昼の空へ轟かせた。
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