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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ソ連の落日
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 核ミサイル発射装置の情報を(おとり)にして、包囲陣に招き入れ、砲火を浴びせる
ソビエトが戦場で幾度となく繰り返されてきた手法、包囲殲滅戦
 だが彼等の真の狙いはゼオライマーをおびき出し、核ミサイル攻撃で吹き飛ばす事であった
『欧州の恥部』を集めたと称される国家保安省(シュタージ)文書集(ファイル)
長年に渡って収集されたKGBの機密情報に、工作員名簿……
ごく一部を除いて、すべてが失われた
ソ連大使館に乗り込んできた、木原マサキという男によって
 シュミット排除の裏側に、ゼオライマーが居る
KGB長官はそう考え、BETA用に準備された核ミサイルを持ち出し、撃ち込むことにしたのだ
室内をゆっくりと歩きながら、ひとり呟いた
「核の炎で、ゼオライマーとファシストを焼き払う。
その衝撃をもってすれば、全世界を我がソビエト連邦の前へ、屈させる事も容易(たやす)かろう」
傍で護衛する兵士に、まるで話し掛けるかのように続ける
余りの感嘆に、思わず身を震わせた
「愉しめる最高のショー、そう思わないかね」
ゼオライマーが核の炎で灰燼に帰す……
その様を脳裏に浮かべて、一人哄笑した


 マサキ達は、赤軍参謀本部を脱出するべく行動した
雲霞の如く湧き出て来る赤軍兵を打ち倒しながら、屋上に向かって進む
窓を蹴割って脱出することも考えたが、無理であった
赤壁(あかかべ)の三階建ての庁舎は、外周を囲むように戦車隊が配備
東部軍管区司令部の建物を流用した、この場所からの脱出は至難の業
ゼオライマーの居るレーニン広場までは、常識では考えられない事であった
この建物の有る警備厳重なセルィシェフ広場から四つほど大通りを抜けねばならない
仮に血路を開いて、カール・マルクス通りには行ったとしても無傷で辿り着けるであろうか

「此の儘、屋上に向かってどうする気だね。
この建物は年代物だ。とてもヘリが止まれる造りをしているとは思えん」
機関銃を撃つ手を止め、鎧衣は怒鳴るような声で彼に問うた
何時もの飄々(ひょうひょう)とした態度で、物静かにしゃべる男とは思えぬ様
幾度となく血路を開き、敵地奥深くから生還してきた人物とは言え、焦っているのであろうか
彼は、照星を覗き込みながら、応じる
「まあ、任せて置け。隠し玉はある」
そう言うと、素早く自動小銃を連射した
男は諦めたかのように肩を竦めると、苦笑した
「君のマジックショーとやらを、楽しみに待とうではないか」
そう吐き捨てると、オーバーコートより卵型の手榴弾を取り出す
米軍のM26手榴弾で、同盟国である日本でも広く使用されている
安全ピンを抜くと、下投げで勢い良く放った
空中で安全レバーが外れると、数秒のタイムラグの後に爆発
哀れな兵士の五体は、爆散して果てた
 爆
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