暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
華燭の典 その2
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を核戦力にのみ頼るほど困窮
それでも、衛星国の一つである東ドイツにとってKGBの諜報網は恐るべき脅威であった
灰皿にタバコを押し付ける
顔を持ち上げ、再び口を開いた
「無論、組織内部の意識改革や制度も問題だが、技術的に立ち遅れ過ぎている。
通信傍受の能力に立ち遅れが見られるのも事実だ。
何れは、無線も丸裸になる……」
彼は、再び男の顔を見る
暫し、思い悩むとこう答えた
「……最悪、人民軍情報部があるだろう」
顔を上げて反論する
「貧乏所帯で今以上の事をさせてどうする。
仮にそうなったとしても、貴様とて安心は出来まい」
彼は苦笑する
「……不安材料は確かにあり過ぎる。
コンピューターの通信網を構築するにも機材(ハード)論理(ソフト)も立ち遅れ過ぎている。
オマケに半導体や電子部品を作るにしても基礎工業力の問題が解決せぬ事には……」
新しいタバコを取り出し、火を点ける
「そこに行きつくか。
実に通関官僚らしい意見だ」
「電力事情も改善せぬのに、夢語りは出来ぬ」

 暫しの静謐の後、男は語りだした
「忌み嫌った国際銀行家に頭を下げるしか有るまい……。
BETAに食い荒らされた事を理由に、ソ連からの資源供給。
いずれは、絶える……。
その前に、とことん西の連中の同情を引いて、統一の同意を得る」
男の真意を量りかねた彼は問うた
「何……、つまりどう言う事だね」
その場より、室内を歩き始める
「アーベル……。
此の儘では未来永劫、傀儡だ」
右の食指と親指で、掴んでいたタバコを灰皿に入れる
灰皿の中にある水に、投げ入れる様にして捨てたタバコが沈んでゆく
「我々は、奴等を上手く使う立場にならねばなるまい……」
男の発言に茫然自失となる
「き、君……、本気かね」
彼の問いに答えるべく、振り返る
不敵の笑みを浮かべながら、こう答えた
「アーベル、俺と一緒に、『祖国統一』という名の果実を得ようではないか」
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