暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
華燭の典 その2
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ライマーという大型機が表れて変化しつつある
何が正しいのか、解らなくなってきた……
釈然(しゃくぜん)としない気持ちが残る
 その様な思いに耽っている時、右肩に手が置かれた
振り返るとヤウクの真剣な表情
無言で頷くと現実へ意識を戻す

 軍楽隊の奏でる葬送曲
悲しい調べと共に儀仗兵が居並ぶ中を、霊柩が進む
指揮官が「捧げ銃」を令し、小銃を捧げる
正面に対し、栄誉礼を持って、葬列を見送る
 運命が違えば、自分もそうなっていたのであろうか
頭巾の上から帽子に雨が滲み、寒さで手足が震えて来る
コートの下……薄ら湿ってきた
好事(こうじ)魔多し』
雨で風邪をひいて大病を抱えるようなことは避けねば……
 その様な事を考える
居並ぶ儀仗兵は小銃で、上空に射撃の姿勢を取る
「弔銃」
指揮官の掛け声とともに、三発の空砲が放たれる
雨の市街地に鳴り響く
挙手の礼を持って、目前を通り過ぎる棺を見送る
嘗ての仇敵に弔意を示し、冥府への旅路の手向けとした

リィズ・ホーエンシュタインは、車窓より離れ行く祖国の姿を見た
『領域通過列車』と呼ばれ、東西ドイツ間で運行される特別列車
「国外追放処分」という名目で、被疑者及び関係者達が一纏めに乗せられる
雨の降る中、ベルリン・フリードリヒ通り駅から西ドイツのハンブルグへ向かう
規定額の西ドイツマルクと、僅かばかりの手荷物
見知らぬ場所へ送り出される
 義兄と自分はこの場所より離れるのを躊躇したが、父母は違った
思えば、住み慣れた祖国を離れると言うのに何処か安堵した様子……
 鉄条網の向こうに着いたら詳しく聞いてみたい
学校で教わったように自由社会というのは堕落しているのだろうか……
あの廃頽的なロックンロールダンスやディスコという米国文化に若い男女が狂乱
詐欺や薬物中毒も多く、治安情勢も祖国と違うと聞く
不安を感じながら、列車は西への旅路を進んだ


「なあ、送り出した未決囚の事を、ボンの連中は丁重に扱ってくれるのだろうか……」
窓辺に立つアベール・ブレーメは、振り返って、奥に腰かける男を見る
紫煙を燻らせ、同じように窓外の景色を眺めていた
「建前とは言え、ドイツ国民の扱いだからそう無下にはしまいよ」
彼は、深い憂いの表情を(たた)えた男に、改めて問う
「やはり潰すのか」
国家保安省の扱いを訪ねる
今回の事件で主要な幹部は何かしらの被害に遭った。
指揮命令系統は寸断され、現場は混乱状態
「今の規模では駄目なのは事実だ。
ネズミ退治をしっかり行ってからではないと話は進むまい……」
男は、国家保安省内に存在するモスクワ一派の完全排除を匂わす
ソ連はBETAの禍によって、既に往時の面影は無い
米国より潤沢な援助はあるが、軍事力のほぼ全て
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ