第2部
エジンベア
商人としての資質
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。なくした私が悪かったんだ。ドリスさんには私から謝るよ」
「アネキ……」
だが、ドリスさんは今外出中なので、帰ってくるまで待つしかない。
「ごめんユウリ。もうちょっとだけ待ってもらってもいい?」
普段は口うるさく言う彼だが、今回に限っては無言で頷いた。
重い沈黙が立ち込める中、ドリスさんが戻ってくるまでの時間はとてつもなく長く感じられた。
やがて、店のドアが開くと、沢山の荷物を抱えたドリスさんが入ってきた。
「おや、誰かと思えば勇者じゃないかい」
前に会ったときと違い、今の彼女はモノクルをつけず、白髪交じりの髪を髪止めできっちり後ろに束ねている。あんなに沢山荷物を持っているのにも関わらず、腰が曲がらずぴんしゃんとしたその佇まいは、かっこよささえ感じる。
だが今は、そんなことを考えてる場合ではない。私は事情を説明し、ドリスさんに髪飾りのことを正直に話した。
「……という訳で、魔物と戦っていた最中に、ドリスさんが大切にしていた髪飾りをなくしてしまったんです。本当にごめんなさい」
そこまで伝えると、私は深く頭を下げる。
「……まあ、魔物がいたんじゃ、仕方ないね。それに、黙って持っていったルカにも落ち度はある。まああれはあたしの趣味に合わないから、そこまで思い入れはなかったけれど……、それでも市場価値はそこそこあったんだよ。もし買い取るとしたら、この店一軒分より高い金を払ってもらうしかないね」
「そっ、そんなにですか!?」
どうしよう。さすがにそんな大金は持ってない。店一軒分だなんて、一体誰が買えると……。
「あ!!」
家一軒買えるくらいの価値のあるもの。確かシーラも言っていたが、あれなら……。
「ドリスさん、それならこれを買い取ってもらえますか?」
私が鞄から取り出したのは、バハラタでタニアさんからもらった黒胡椒だった。その黒い小さな粒が入った小瓶に目が留まった途端、ドリスさんの表情が一変する。
「こりゃあ珍しい……! 黒胡椒なんてこの辺じゃほとんど見かけない貴重なものじゃないか! 一体どこで手に入れたんだい??」
「ここから東にあるバハラタという町に、黒胡椒を売っているお店があるんです。そこで頂きました」
私がドリスさんに説明していると、突然背後からものすごい圧を感じる。振り向くと、ユウリが恨めしそうな目でこちらを睨んでいた。
「おい、本当にその黒胡椒、売る気か?」
その殺気交じりの声色に、思わず身を竦ませる私。そういえば、ユウリは黒胡椒を使った料理が好きだったっけ。この黒胡椒はタニアさんからお礼にもらったものだし、もしこれを売ってしまったら、もう黒胡椒の料理は食べられなくなってしまう。確かに私も好きだが、彼はそれ以上に黒胡椒の虜になっているようだ。
「で、でも、これ以上に売れそうなものなん
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