暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第一章 〜暗雲〜
九十 〜秘め事〜
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ぬか」
「どう、とは?」
「何でも良い。堅殿が歳殿を気に入っていた事はわかるが、歳殿がどうだったかは質した事がないからの」
 一口、茶碗の中身を流し込んでから、暫し考える。
 問いは、一人の英雄としてという事か。
 ……それとも、女としてか。
 恐らくは、どちらも正解なのであろう。
「武人としては、文字通りの虎。勇敢で、戦場で真価を発揮する猛将だな」
「その通りじゃな。儂も武人の端くれじゃが、堅殿のようにはなれぬ」
 再び、杯を干す祭。
「武人と一口に言っても様々じゃ。堅殿のように死など意に介さぬ御仁もいるが」
 と、祭は私を見る。
「何だ?」
「いや、歳殿も猛将と言って過言ではないが。堅殿とは随分違うと思ったまでじゃよ」
「そうであろうな。睡蓮は己の勘を頼りに、火の玉の如き突破力を持つ。私はただ、負ける喧嘩が性に合わぬのでな」
「はっはっは、歳殿らしいのぉ。……堅殿も、多少はそれを見習っておればの」
「いや……。残念だが、天命には逆らえぬ。私とて、それは同じだ」
「天命か。堅殿ならば、それすらもあの勘で避けるとばかり思っておったが」
 祭は、フッと息を吐いた。
「ならば、歳殿。女としてはどうじゃった?」
「魅力的であろう、多分にな」
「ふむ、やはりか。……だが歳殿は、堅殿の度重なる誘いを軽く受け流していたようじゃが?」
「そう見えたか」
「ああ。無論、堅殿も何処まで真剣だったかは怪しいものじゃが」
「ふっ。まさにその通りだな」
「で、どうなのじゃ?」
 ずい、と祭は顔を寄せてきた。
 吐息が酒臭い……とは申せる雰囲気ではないな。
「……そうだな。手を出そうとは思わぬ相手ではあったな」
「何故じゃ?」
「考えてもみよ。男女の営みに小難しい理屈や打算が必要と思うか?」
「むう……」
 と、考え込む祭。
「家に血を入れるとか、子を成す事ありき……それでは興ざめというものだ」
「そ、そういうものか?」
「少なくとも、私はそう思っているが。祭は違うのか?」
「わ、儂か? 儂は、儂は……」
 急に落ち着きを失ったようだが。
 何か妙な事を言ってしまったのであろうか?
「ええい、儂らしくもない!」
 今度は、己の頬をバシバシと叩き始めた。
「歳殿。折り入って頼みがあるのじゃ」
「頼み? ふむ、聞こう」
「え、ええとじゃな……」
 思い切った割には、歯切れが悪い。
「じ、実はの……儂は……」

「失礼します〜っ!」
 不意に、何者かがそこに乱入してきた。
 思わず、兼定に手を伸ばす。
「あははは〜っ、大丈夫れすよ〜。わたしれす」
「お、お主は飛燕?」
「そうれすよ〜? 歳三様、飲んでましゅか〜?」
 酷く酩酊しているようだが……祭も呆気に取られている。
「何があった
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