第二部 1978年
ミンスクへ
褐色の野獣 その2
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(やしゃ)にならねばなるまい……
其方が、今日より夜叉となって、その任に当たれ」
不敵の笑みを浮かべる
「その為に、支那で拾った男には、捨て石になって貰うのよ」
《翁》は高らかに笑った
《翁》が、一頻り笑った後、彼は尋ねた
「《例の男》が、生き延びた際は、如何様に扱われるのですか」
腕を組んで、彼の方を見る
「形ばかりの褒賞を、幾らでも与え、飼い殺しにでもしようぞ。
女を侍らせている所を見ると、余程の好色家に思える。
好みそうな美女でも仕立て上げ、情で其奴を縛れば、無闇なことも出来まいよ」
再び、高らかに笑う
「其方が活躍、愉しみに待っておるぞ」
彼は、その会話を思い出しながら、木原マサキに会いに向かう
マサキは、帝国軍の戦術機訓練に参加していたが、飽きた彼は、抜け出す
訓練場の裏で、タバコを吹かしていた
うんざりする様な曇り模様に、この寒さ……
コヨーテの毛皮が付いた軍用防寒着を着て、爆薬箱を椅子代わりにし、腰かけていると、草叢から、例の《会社員》が表れる
帽子を被った男は、オーバーのマフポケットに手を突っ込んだ状態で、彼に向かって問う
笑みを浮かべながら、諧謔を弄した
「君が冥府より、わざわざ現世を訪ねた事は、すで伺っているよ」
その一言を聞いて訝しむマサキ
思わず、こう言い放った
「俺は、この世界に来て様々な連中に在ってきたが、貴様等ほど傲慢な人間は、知らぬ。
こんな偉そうに振舞っている乞食なぞは、見た事も聞いた事もない」
男は、立ち竦んだ侭、冷笑している
彼は、眼前の男に、こう答えた
「しかし、覗き見も大変であろうよ。
俺と美久を、貴様は覗いていたのは把握している」
彼は、次元連結システムを応用した携帯型探知装置で、男の動きを逐一観察していた
「中々、他人の目に曝されながら暮らす等と言う事は、出来ぬ。
良い経験になった」
彼は、苦笑する
「何時でも、俺を尋ねれば良い」
そして、捨て台詞を言い放った
「見たけりゃ、見せてやるよ」
男は、一瞬唖然とした表情になった後、剽軽な態度を取った
「おやおや……。
吃驚させようと思って居たが、全てお見通しかね」
男は、一瞬目を瞑る
目を見開くと、静かに告げる
「ふむ、中々、君も秘密の多い男だね。
では、私は帰る途中なのでね……。
此処で、失礼するとしよう」
男はそう言うと、草叢の中に消えて行く
(「この溝鼠野郎が……」)
姿の見えなくなった男に、彼は心の中で叫んだ
入れ替わる様に、強化装備の篁
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