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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
燃える極東 その2
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 夜陰(やいん)に紛れて、マサキ達はゼオライマーが居る市街地の反対の場所に向かった
船着き場の有るアムール川(支那側呼称:黒龍江(こくりゅうこう))の方に歩みを進める
遠目にソ連の巡邏(じゅんら)隊を認めた時、背負って来たM16自動小銃を使おうとするが、鎧衣(よろい)に止められた
 一瞬驚く彼の目の前で、折り畳み銃床のカラシニコフ自動小銃を出す
何処から持ち出したのであろうか……、そんな彼の疑問より早く発砲する
単射で素早く巡邏隊の兵士の脳天を撃ち抜くと、彼の左手を強く引っ張り物陰に隠れた
友軍の銃器で狙撃された彼等は混乱し、その場で警戒態勢を敷く
 男は懐中より望遠鏡のような物を取り出して、周囲を見回す
携帯式の暗視装置であろうか……
その様な事を考えていた彼の耳元に右手をかざすと、こう囁いた
「今のうちに駆け抜けるぞ。木原君」
自動小銃を腰だめで抱えて、その場から駆け出すようにして逃げた


 マサキは鎧衣と共にアムール川の河畔に居た
重装備の儘、駆け抜けた事で着ている戎衣(じゅうい)は汗で肌に張り付き、所々色が変わっている
米軍のプラスチック製水筒を取り出し、水が滴り落ちるのを気にせずに一飲み
タオルで顔を拭うと、深く深呼吸する
上着を鳩尾(みぞおち)まで(はだ)けると、男の方を振り向かずに、こう告げた
「鎧衣よ、貴様の事だ。
ソ連側から中共まで川を泳ぐぐらい造作も無かろう。しかも今は夏だ……。
凍えて死ぬ心配はあるまい」
不敵の笑みを浮かべた
「ほう、船着き場まで連れてきたと言う事は……、中共党幹部と渡りを付けろと……。
そう言いたかったのかね」
懐より、紙巻きたばこの「ホープ」を取り出す
「支那をまるで庭の如く知っている貴様なら、どうとでもなるであろう」
金属製のガスライターで火を点けると、悠々と紫煙を燻らせた
男は、その様をオーバーのマフポケットに手を突っ込んで眺めている
「いやいや、結構、結構。では北戴河(ほくたいが)で舟遊びをして来ようと思う」
 北戴河、記憶が確かならば共産党幹部が夏季に集まる渤海(ぼっかい)湾沿いの避暑地(ひしょち)……
ふと、その一言が気になった
 鎧衣は、意味深な言葉を残して、背を向ける
すっと消える様にして、夜霧の立ち込める船着き場へと向かった
男の姿を見送りながら、煙草を深く吸い込む
深く息を吐き出した後、側溝に向かって放り投げた
それとほぼ同時に、彼の姿は消えた 

 
 マサキは、ゼオライマーの操縦席に転移すると、一人思い悩んだ
(しば)し目を閉じて、過去の追憶に旅立つ……
 元の世界のソ連・極東のシベリアを思い浮かべる
真夏は摂氏40度を超え、真冬は氷点下40度以下……
年間の温度差が摂氏百度にまで達するほどの過酷な環境
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