第二部 1978年
ミンスクへ
我が妹よ その2
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だった
ソ連の為に志願して、あの《大祖国戦争》(独ソ戦のソ連側呼称)を戦った祖父に待っていたのは国外追放であった
17世紀にドイツから移住したボルガ系ドイツ人を祖に持つ彼の祖父母
彼等は、大粛清の折、中央アジアに強制移住させられた後、ドイツに再移住させられた
大本を辿ればドイツ人だが、言葉や宗教、習慣も違うドイツに、捨てられたのだ……
祖父は志願して、東部戦線に参加したにも関わらず、勲章も恩給一つも貰えず、弊履を棄つるが如し扱いを受ける
その様な環境から身を起こして、空軍士官学校次席を取るのであるから、彼の努力は並々ならぬものである事が判る
やはり、家族の強い絆と深い愛の裏付けがあって、為し得たのであろう……
貧しいながらも、温かい家庭……
ヤウクが羨ましいと、心から思うた……
「どうした、急に泣き出して」
同輩が滂沱する様に、ヤウクは困惑した
目頭を、官給品のハンカチで抑え、下を向いた侭だ
ハンカチを取り、内ポケットへ畳むと、綿入れの腰ポケットから落とし紙を取る
鼻をかみ、眼を拭くと、彼の方に振り返った
「ああ、昔を思い出していたのさ……」
羊皮の防寒帽を被ったベルンハルトの顔は、涙で濡れ、目は赤く充血している
彼は、同輩の真横を向きながら、話し始めた
「最近の君は、感傷的では無いかい……。
妹さんが気になるんだろう。
美丈夫の君に似て、麗しい目鼻立ちと聞くし……。
色々、先々が心配なんだろう」
「ああ……、俺の取り越し苦労かもしれんが、アイツは、俺が死んだら俺を思うて苦しむのであろうと悩んでいた。
ベアトリクスも、そうだ。
時々、思うのだが、彼女達の愛は深く、そして重い。
贅沢な悩みかもしれんがな……」
彼は、冷めたコーヒーを口に含む
「ユルゲン……」
泣き腫らした顔を彼に向ける
「俺はときどき思うのさ。
あいつ等は、俺が無き後も独り身で、寂しく死ぬのではないかと。
変に操など立って、高邁な思想とやらで覆い隠し、国の為に殉ずる……。
そう思えてくるのだよ」
彼は、目の前の同輩に心から忠告した
「彼女たちを幸せにするか、否かは君の行動次第じゃないかな。
有触れた言葉だけど、女の幸せを知らせてやる。
それを出来るのは君しか居ないじゃないか……。
何時までも逃げていないで、彼女を娶ってあげなよ。
君が承諾しなければ、薹が立つまで待ち続ける」
同輩は、冷笑した後、天を仰ぐ
「貴様は、其れしか言えんのか……。
まあ、良い。
思い人など居るのか……」
彼は、満面朱を注いだ様子になる
「実は、まだ誰にも明かしていないんだけど、同志
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