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代々ローマに
第四章

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「タギネーの戦いの後で」
「そうでしたがその時です」 
 男はさらに言った。
「ローマの市民はその数を大きく減らし」
「そしてですか」
「五百人程にです」
 そこまでというのだ。
「帝国の最盛期には百万に達していたのが」
「はい、ローマ帝国の衰退とです」
 それに合わせてというのだ。
「そしてです」
「以後の戦乱で、ですね」
「ローマの人口自体も減少し」
「特にそのナルセスの殺戮で」
 率いている軍を督励したそれでだ。
「それで、でしたね」
「より多くの人口を失い」
「五百人程にまでなりました」
 百万からそこまでなったとだ、男は言った。
「その中に閣下のご先祖もおられたのでしょうか」
「難を逃れて」
「あの、やはりです」
 男は考える中で言った。
「他にもペストもありましたが」
「それでもですか」
「流石にこの時は」
「五百人まで減った時は」
「他の災厄の時よりも」
 さらにというのだ。
「酷いもので」
「五百人程まで減るとなると」
「流石にです」
 こう言うのだった。
「閣下のご先祖も」
「そう言われますと」
「ローマを出られてですか」
「そうではないでしょうか」
「それはです」
 カヴァラドゥッシはそれはという顔になって答えた。
「言われますと」
「その可能性がありますね」
「否定出来ません」
 こう男に答えた。
「やはり」
「左様ですね」
「多くの災厄があった街ですがその中で」
「あの時はですね」
「ローマは特に人が減っていたので」
「その中に閣下のご先祖がおられたか」
「わかりません、いえ」
 カヴァラドゥッシは男に答えた。
「いるとはです」
「思えないですか」
「何しろホノリウスの無策で、です」
「ローマは破壊され」
「当然多くの命が失われ」
 まずはこのことがあってというのだ。
「そこから復興が充分でないまま」
「ビザンツ帝国があの半島に入り」
「そしてです」 
 そのうえでというのだ。
「ナルサスの殺戮があったのです」
「それならですね」
「もうホノリウスの頃にです」
 カヴァラドゥッシは男に考えながら答えた。
「ローマを去り」
「そしてですね」
「長い間離れていたかも知れません」
「そして落ち着いてからローマを去った」
「そうかも知れないです」
 確かなことはわからないがというのだ。
「当家はローマが生まれた時からローマにあったといいますが」
「それでもですね」
「長い歴史を持つ街です」
 それ故にというのだ。
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