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代々ローマに
第五章
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「ローマは繁栄もあれば」
「災厄もありましたね」
「はい、順調な街ではありません」
「むしろあれだけ災厄があった街はないですね」
「歴史が長く」
 そしてというのだ。
「多くの勢力が入り込んだが故に」
「その為にですね」
「多くの災厄があり」
「そこでずっとローマにいては」
「私もこうしてです」
 カヴァラドゥッシ自身もというのだ。
「この様にです」
「今はローマにおられないですね」
「もうこの国で住みます」
 アメリカでというのだ。
「ローマには兄が残っているので」
「お兄さんに任せて」
「家のことは。それに私は君主制はやはり性に合いません」
 このこともあってというのだ。
「ですから」
「合衆国に住まれますか」
「そうします、この国の空気も肌に合っていますし」
「だからですか」
「そうします、しかし本当に」
 カヴァラドゥッシはあらためて話した。
「代々ローマにいたと言っても」
「その実はですね」
「常にそうだったかというと」
「わからないですね」
「はい」
 まさにというのだ。
「それがわかりました」
「今のお話で」
「はい」
「そうですか」
「そう言われるとです」
「そのことはわからない」
「そのことがわかりました」
 こう男に話した、その後カヴァラドゥッシは彼に昼食をご馳走した。そして午後は仕事に専念して。
 歌劇場からリハーサルを終えて家に帰ってきた妻となるトスカに話した、茶色の髪が印象的で高い鼻が目立つ独特の美貌の女だ。
「そういう次第だよ」
「貴方のお家も常にローマにいたかわからないのね」
「うん、今は兄さんがいるけれど」
 それでもというのだ。
「これからもわからないね」
「常にローマにいられるかは」
「あの街は本当に災厄も来るから」
「その災厄を逃れる為に」
「どうなるかはね」
 本当にというのだ。
「わからないよ、そもそも長い間でなくても」
「少しの間は」
「離れたこともあるし」
 そうしたこともというのだ。
「だからね」
「常にというと」
「どうかな、ただ僕は」
 カヴァラドゥッシは自分のことも話した。
「もうローマには戻らないよ」
「この国で暮らすのね」
「アメリカでね、仕事もあるし」
 画家としてのそれがというのだ。
「君とも一緒だからね」
「それでなのね」
「君も仕事を得ているし」
 歌手としてのそれをだ、トスカはローマにあった頃と同じくこの国でもその素晴らしい歌が認められているのだ。
「だからね」
「このままなのね」
「暮らしていくよ、では式のことを話そうか」
 カヴァラドゥッシはこちらのことに話を移した。
「そうしようか」
「ええ、もうすぐだからね」
 トスカも頷いて応えた。

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