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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第112話『先陣』
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勝ち上がってんだあのガキ共は……」


影丸の言う「ガキ共」とは、言わずもがな【日城中魔術部】のことである。
昨日の試合ではもう覆すことができないくらい追い込まれていたというのに、どうして逆転して勝ち上がっているのか。甚だ疑問でならない。


「そういう言い方は良くないよ。彼らだって頑張っていたんだから」

「昨日お前から聞いた話じゃ信じられないんだよ」

「……そうだね。僕も驚いたさ」


事の顛末は全てアーサーから伝え聞いている。にわかに信じ難いが、確かに彼らは自分たちの力で強敵を突破していた。ただ一つ、不可解な点を残して。


「火事場の馬鹿力とはまた違う。むしろ、火事場の冷静さと言うべきか。追い込みの一手一手に無駄がなかった。まるで、そうなることがわかっていたかのように」


アーサー曰く、実際に見ていないのが悔やまれるくらい、鮮やかなクライマックスだったそうだ。
とはいえ、独りならともかく、疲弊した少女を連れてそんな動きが果たしてできるのだろうか。相手はまだ余裕そうだったし、遠目でもそれなりの手練だと思ったが。そんな相手に勝つにはそれこそ、


「じゃあ未来予知でもしてたってのか? 馬鹿馬鹿しい。大体、そんな能力(アビリティ)聞いたことないぞ」


考えられる要因の一つとして、何が起こるのか予測できたということ。相手の動きが読めれば、対策を建てることも可能だ。
ただ、少年の実戦経験がどれくらいのものかは知らないが、そんなことはそう易々とできることじゃない。それこそ、能力(アビリティ)に頼ったりしなければ。
しかし、彼の能力(アビリティ)は"風"にまつわるもの。"予知"とは関わりがないように思えるが……。


「聞いたことがなくても、可能性はゼロじゃない。それが魔術さ。君はそう教えてもらったんだろ?」

「……! そう、だな」


魔術において、能力(アビリティ)が他人と被ることはありえない。つまり、前例がないことは存在しないことの証明にならないのだ。

──昔、そう教えてくれた人がいた。


「あいつは、本当にあの人の……」

「また言ってるのかい? そんなに気になるなら、本人に訊けばいいのに。恥ずかしがっちゃって」

「な……タイミングがなかっただけだ!」

「はいはい、そういうことにしておくよ」


アーサーの軽口を退けながら、影丸は頭にある人物を思い浮かべる。
この疑念に気づいたのは、予選で少年と初めて話した時だ。あの時はたまたまだろうと思っていたが、


「可能性はゼロじゃない、ね──」






昼休憩が終わって日も真上から傾いた頃、ジョーカーの大きな声が会場に響き渡る。


『それでは、張り切って
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