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魔法使い×あさき☆彡
第十四章 慶賀雲音
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で。先に、ウメちゃんたちに加勢してくるわっ」

 雉香は、いうが早いか飛ぶように足を疾らせ、ねじれ歪んだ自動車の間を縫って、ねじれ歪んだトラックとコンテナの間に軽々と身を踊らせて、反対側へと抜けた。

 ふわっと広がる視界には、二体のヴァイスタと、交戦中の()(しま)(しよう)()(みち)()(おう)()の姿があった。

 正確には、現在戦っているのは祥子だけであるが。
 足を痛めたのか、上体だけを起こしている応芽の前に、祥子が庇い立って、左右二本の手斧を器用に操って、ヴァイスタの攻撃を受け止めている。

 防戦一方、さもあろう。
 相手が二体というだけでなく、応芽を庇いながらの戦いであるためだ。

 だが、

「お待たせえっ!」

 白い魔道着の魔法使い、白田雉香が、ヴァイスタの背後から、青白く光る剣を横へ一閃。
 骨まで断ちそうなくらいに深々と、その身を、その肉を切り裂いていた。ヴァイスタに骨があるかどうか、定かではないが。

 しかし、その一撃も致命傷にはならなかったようである。突然の敵へと振り向こうとするヴァイスタの、その傷が、もう回復し掛かっている。
 致命傷を与えない限り、ヴァイスタはどんな傷であろうとも、すぐに回復してしまうのだ。

 ヴァイスタの一体が、雉香へと向いたことで、祥子にとって自分の正面が相手の背後になった。
 決定的なチャンス到来。すぐさま左右の手斧を振りかざして、切り掛かった。

 だが、祥子の反撃を読んでいたか、ヴァイスタは、ぶんと長い腕を振って、正面に位置する雉香を、上から叩き潰そうとするのと同時に、もう一本の長い腕を横に振り回して、祥子を弾き飛ばそうと攻撃した。

 一体のヴァイスタの、前と後とで、うわっ、と同時に女子の悲鳴が上がった。悲鳴を上げつつ、雉香は横へ、祥子は身を低く屈めて、それぞれ攻撃をかわしていた。

 と、そこを狙っていたかのように、もう一体のヴァイスタが、触手に似た長い腕を振るって、祥子を襲った。

 二本の手斧で、かろうじて触手を弾き上げながら、地を蹴って、後ろに退いた祥子は、

「この通り、なんか動きが厄介でね。連係っぽいこともしてくるし。今日の個体は厄介だ」

 雉香へと、苦々しげな表情を向けた。

「でも、もう充電は出来たのかな? ウメ」

 祥子は、顔を半分だけ振り向かせて、ちらり横目で、背後にいる応芽の姿を見た。

「ああ。もう、たっぷりとな」

 応芽は、両手に握った騎槍(ランス)を杖にして、立ち上がった。

 ぐ、と顔が苦痛に歪んだ。
 腰からの垂れにより半分隠れているが、右の太ももを、深くえぐられて、どくどくと血が流れ出ている。そのための、激痛であろう。
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