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吸血鬼は永遠に
密売組織
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 その日の夜、ローラは久しぶりにバスタブに湯を張って浸かる事にした。何時もは忙しいため、シャワーで済ませる事が多かったのだが、今日は独り静かに、浴槽で物思いに耽りたい気分だった。バブルソープを入れて泡立ったバスタブにゆっくり体を横たえる。ふと、胸元のネックレスに目が行った。鈍く光る銀の鎖に白いムーンストーンが清純な光を放っている。
「お近付きの印に……」
グレイ伯の低い声が脳内に木霊した。全く、何という事かしら? ローラにだって今まで付き合った男は居たが、何れも結婚まではいかなかった。相手にそのつもりが無かった場合もあったし、ローラの方でも、仕事と結婚生活を両立出来るか不安でもあったのだ。そもそもプロポーズなど初めての事である。

 ローラは泡を腕に撫で付けると、伯爵の顔を思い浮かべた。渋くて良い男だと思う。かなり年齢が上だし、会うなり愛の告白とはイカれていると思うが、正直言えば嬉しかった。だが、相手はお貴族様である。男っ振りも良くて財力も申し分無いのだ、女など幾らでも好きに出来るだろうに、何故出会ったばかりの平民の私なのか? ローラは浴室に掛けてある鏡の曇りを拭くと覗き込んだ。整った顔立ちではあるが、凡そセクシーさとは無縁の少年の様である。外見の魅力に参ったとも思えなかった。
「考えたって分かる訳無いわね」
ローラはそう呟くと、体を洗い始めた。

 翌日からまた何時もの日々が始まった。オフィスに着くと、マックスが待ち侘びた様な様子で声をかける。
「それで、どうするつもりだ?」
「どうって……」
「昨日の伯爵の野郎の件だ!」
マックスは鼻息も荒くローラーに詰め寄った。
「分からないわ。しばらく考えたいの」
「そうか。俺はお薦めしないけどな」
「どうして?」
「先ず身分が違いすぎる! それにな、出会ったばかりで相手の事をろくに知りもしないのにプロポーズするなんざ、何か良からぬ事があるに違いないぞ」
「そうかもね」
「それだけか?」
「ええ。今の所はね。とにかく、今日も仕事よ」
マックスは納得いかない様子だったが、席に戻った。

 デスクで昨日の捜査結果についての書類を書き込んでいたローラは、落ち着かなかった。作業に集中しようとしても、伯爵の姿と声が頭にこびりついて離れないのである。美しい金髪と厳めしくライオンの様に精悍な顔。とりわけ、あの狼を思わせる青い冷たい瞳が、ローラを捕らえて離さなかった。今は自分はオフィスに居て、伯爵とは物理的に距離が離れているにも関わらず、常にあの瞳に監視されている様に感じた。そしてあのやや陰があるが堂々とした立ち姿を思い返す度に、自分がまるで蛇に睨まれたカエルにでもなったかの様な気分になるのだった。今までどんな人物に出会っても、偉ぶる課長の前でさえ、こんな風に感じた事は無い。やはり生まれな
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