-恐怖の獣たち-
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でも、あたしのお姉ちゃんだもん。きっとまた一緒に笑ってくれるよ」
「そうかな……」
そんな雰囲気ではなかった、とは口が裂けても言えなかった。日菜のキラキラとした目を見ると、ハルトは口を噤むほかなかった。
その時。
「_________!」
これまで耳にしたことがないような、おぞましい音がハルトの耳に響く。
「何……?」
「なんか……ぞぞぞわってしたよ……?」
その音に、日菜もまた足を止めた。
ざわめく木々が、何かに怯えている。夕方だというのに、木々から鳥たちが蜘蛛の巣を散らすように逃げ惑う。
「日菜ちゃん! みんなのところに戻って! ちょっと、様子を見てくる!」
異変を感じたハルトは、体に走る悪寒に従って走る。
「あ、ハルト君!?」
日菜が駆け出したハルトに叫ぶ。
だが、ハルトは彼女に耳を貸すことなく、その方向へ走っていった。
紗夜がいる場所とは真逆の方向の遊歩道。
深い森の中で、それはいた。
「何だあれ!?」
ブロブ。
ゼリー状の塊を意味するその言葉が、もっともその生命体には相応しい。
縦長に開いた巨大な口のような器官。ウミウシのような体は、口を大きく見せるために直立していた。口の内部には、無数のひだがついており、その両脇から伸びる触手で捉えた人々を捕まえようとしていた。
「な、なにあれ……!?」
その余りのおぞましさに、ハルトに付いてきた日菜も恐怖の表情を浮かべている。
だが、彼女に構う暇もない。
「日菜ちゃん! 絶対にそれ以上近づかないで!」
「ハルトさん!?」
ハルトは日菜に構わず、そのまま触手に捉えられている青年へ駆けつけた。
「いきなり何なんだ!?」
『コネクト プリーズ』
魔法陣よりウィザーソードガンを取り出し、ソードモードで触手を切り裂く。
解放された青年を受け止め、触手を取り除く。
さらに、続けてウィザーソードガンを駆使し、全ての触手を切り落とす。
「逃げて!」
逃げていく人々を見送り、すぐ背後で腰を抜かしている日菜の存在にも気付く。
「日菜ちゃん! 君も速く逃げて!」
だが、日菜には聞こえていない。ハルトに妨害されたことによる怒りと、次の獲物として日菜を見定めた怪物の姿に、口をわなわなと震わせていた。
「やばい!」
後先を考える暇なんてない。
日菜の前に立ち、彼女の代わりに自身の右手を怪物に食らわせる。容赦のない圧力が右手を支配し、悲鳴を上げる。
「逃げて……! 早く……!」
「あ……!」
その姿に、日菜は青ざめる。
だが、もう隠してはいられない。
ハルトはそのまま、自由な左手で右腰の指輪を二つ取り出す。うち一
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